研究課題/領域番号 |
15H02349
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
影山 龍一郎 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 教授 (80224369)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 成体脳神経幹細胞 / 胎児神経幹細胞 / 発現動態 / Mash1/Ascl1 / Hes1 / 発現振動 / 静止状態 / レンチウイルス |
研究実績の概要 |
Hes1タンパク質の発現量を正確に反映する発光レポーターマウスLuc2-Hes1 BAC Tgと蛍光レポーター・ノックインマウスVenus-Hes1 KI Tg、およびMash1/Ascl1タンパク質の発現量を正確に反映する発光レポーターマウスLuc2-Ascl1 BAC Tgと蛍光レポーターマウスVenus-Ascl1 BAC Tgを用いて成体脳の海馬歯状回および側脳室上衣下帯領域のスライス培養を行い、発光および蛍光量を測定した。その結果、活性型神経幹細胞ではMash1/Ascl1タンパク質の発現量がダイナミックに変化すること、一方、静止状態の神経幹細胞ではHes1の発現が持続するためMash1/Ascl1の発現が抑制されていることが分かった。このことから、静止状態神経幹細胞においてMash1/Ascl1の発現振動を誘導することによって活性化できることが示唆された。 次に、光遺伝学的手法でMash1/Ascl1の発現を誘導できるシステムを組込んだレンチウイルスを開発した。このウルスを成体脳の海馬領域に注入したところ、海馬歯状回の静止状態神経幹細胞に効率良く感染させることに成功した。また、これらの細胞に青色光照射でMash1/Ascl1の発現を誘導することに成功した。 一方、胎児脳神経幹細胞および成体脳神経幹細胞からRNAを抽出し、次世代RNAシークエンスを行い、発現遺伝子を比較した結果、発現量の異なる遺伝子を同定した。さらに、胎児脳神経幹細胞に多く発現する遺伝子を静止状態神経幹細胞に発現させると、ある程度の活性化が起こることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
成体脳神経幹細胞におけるMash1/Ascl1およびHes1の発現動態が明らかになり、胎児期神経幹細胞のそれとは異なることが分かった。さらに、光遺伝学的手法でMash1/Ascl1の発現を誘導できるシステムを組込んだレンチウイルスを開発し、成体脳海馬歯状回の静止状態神経幹細胞に効率良く感染させることに成功した。今後、光遺伝学的手法で成体脳神経幹細胞にMash1/Ascl1の発現振動を誘導し、増殖を活性化できるかどうかを解析できる準備が整った。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように、光遺伝学的手法で成体脳神経幹細胞にMash1/Ascl1の発現振動を誘導し、増殖を活性化できるかどうかを解析できる準備が整った。今後、光強度や照射時間を変えてMash1/Ascl1の発現振動の誘導に最適な照射条件を決定する。この照射条件下で1週間、1ヶ月、3ヶ月間Mash1/Ascl1の発現振動を誘導できるかどうか、さらにその期間、成体脳神経幹細胞が活性化されているかどうかを検討する。6ヶ月齢の若いマウスで効果が確認できれば、12ヶ月齢以上の高齢マウスで同様の実験を行う。 また、次世代RNAシークエンスで同定した遺伝子についてそれらの活性をしらべ、静止状態神経幹細胞の活性化につながる新規遺伝子群を同定する。
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