研究課題/領域番号 |
15H02360
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研究機関 | 公益財団法人実験動物中央研究所 |
研究代表者 |
佐々木 えりか 公益財団法人実験動物中央研究所, 応用発生学研究センター, センター長 (70390739)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | マーモセット / キメラ |
研究実績の概要 |
非ヒト霊長類の実験動物は、生理学的、解剖学的にヒトに近いモデルとして様々なバイオメディカル研究に貢献している。中でも小型非ヒト霊長類のコモンマーモセット(マーモセット)は、遺伝子改変技術が確立し、新たなモデル動物としての開発が進められている。これまで非ヒト霊長類では、ES細胞、iPS細胞からキメラ動物が作製できなかったが、ゲノム編集技術の発達により標的遺伝子のノックアウト(KO)動物の作成が可能となった。しかしながらゲノム編集技術による標的遺伝子KI動物の作製は、マウスのように多くの卵子を使用できない非ヒト霊長類に応用することは困難であり、これを克服するためには、非ヒト霊長類におけるES細胞、iPS細胞からキメラ動物作製を可能にする必要がある。そこで霊長類のES/iPS細胞を用いたキメラ動物作出のための基盤技術としてのキメラマーモセット作製技術を確立する。平成27年度は、GFPマーモセットの受精卵をドナー胚として、どのステージのドナー細胞とホスト胚の組み合わせが最も適切かを移植細胞の内部細胞塊への寄与をin vitro, in vivoにおいて免疫組織科学的に明らかにした。自然交配卵のGFP陽性マーモセット胚盤胞の内部細胞塊、卵割期~桑実胚期胚の割球を卵割期および胚盤胞期胚に注入し、キメラ胚作出の条件検討を行った。培養後の注入胚は、パラホルムアルデヒド固定後、抗Nanog抗体、抗GFP抗体を用いた免疫染色を行い、ホスト胚の内部細胞塊への移植細胞の寄与率を解析した。これらの検討により、キメラ胚作製時のドナー胚、レシピエント胚の最適発生ステージの組み合わせが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マーモセット受精卵を用いたキメラ胚作製実験は順調に進んだ。またテトラプロイド補完法についても新たな知見が認められ、研究を更に推進するために、実際にES細胞、iPS細胞でキメラ胚を作成し検討を行うために必要なnaive型ES細胞/iPS細胞を作成の準備も開始した。
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今後の研究の推進方策 |
ホスト胚の内部細胞塊に移植細胞の寄与率が高いキメラ胚を作製し、仮親の子宮に胚移植を行う。キメラ動物作製では、生殖系列キメラが作出されることが重要である。そこで生殖細胞がキメラとなっているかどうかを明らかにするために75日胚を回収し、生殖巣におけるGFP陽性始原生殖細胞の存在を抗GFP抗体、抗Vasa抗体を用いた免疫組織染色により検証する。ブタnaive様iPS細胞では、胎児発生が進むにつれ、移植細胞の寄与率が下がる事が報告されている(Fujishiro et al., Stem Cells and Development 2013)。そこで75日胚でGFP陽性細胞が認められたら、90日齢の胎児においても同様に調べる。キメラ胚の作出が困難な場合には、アカゲザルではキメラ個体が得られている集合胚キメラの条件に近い方法でキメラ胚作製を試みる。即ち、卵割期胚とGFP陽性内部細胞塊とのアグリゲーションキメラ胚を作製し、盤胞期まで培養を行った上で抗Nanog抗体、抗GFP抗体を用いた免疫染色を行って内部細胞塊へのドナー細胞の寄与率を検討する。
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