研究課題
染色体不安定性は、がん組織を構成する細胞の不均一性を増大させる要因であり、病期の進行したがんに共通してみられる性質である。その主因は、M期における染色体動態異常であることが指摘されてきた。われわれは、染色体動態を制御する染色体パセンジャー複合体(CPC; Chromosomal Passenger Complex)の機能低下が広くがん細胞に見られ、それゆえに染色体不安定性をきたすことを報告した(Developmental Cell 36: 489-497, 2016)。昨年度までの本研究で、CPCの機能維持の背景には、正のフィードバック機構が重要な役割を担っていることを見出した(Cell Cycle 15:2091-2092)。本年度はこれを踏まえて、がん細胞ではなぜHP1とCPCとの相互作用が低下しているのか明らかにするために、正のフィードバックの鍵となる「HP1とCPCの相互作用」について構造学的な解析を進めることを目的とした。そのために、相互作用を担う部位のリコンビナントタンパク質の精製、あるいはホロ複合体の解析のために複数のタンパク質を同時に発現誘導する系をつくり複合体の精製を行った。これまでの解析の結果、HP1とCPCの相互作用には、既存の結合ドメインに加え、Aurora Bによるリン酸化が関与する新たな結合ドメインが必要であり、複雑な結合制御の存在が見出された。Aurora Bによるリン酸化が関与するこの新規結合様式こそが、Aurora Bシステムのアキレス腱であることが示唆された。Aurora Bシステムの脆弱性はあらゆるがん細胞に観察され、染色体不安定性という細胞病態を、おそらく最も普遍的かつ端的に説明しうる分子背景ではないかと考えられる。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Biomedical Research
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生化学
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http://www.jfcr.or.jp/tci/exppathol/
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