研究課題
(1)ゼブラフィッシュにおいて、Gal4を組み込んだ遺伝子トラップ型トランスポゾンコンストラクトをゲノムにランダムに組み込ませ、細胞・組織・器官特異的にGal4を発現するトランスジェニックフィッシュの大規模スクリーニングを実施し、新規に120系統を同定した。これらフィッシュ系統のサザンブロット解析、インバースPCR等分子生物学的解析を行うことにより、トランスポゾン挿入部位を決定した。これら発現パターン、ゲノム情報をデータベースzTrap上で閲覧・検索可能にした。(2)上述のトランスジェニックフィッシュを用いて、以下の共同研究を実施した。神経細胞分化におけるニューレグリンーErbBシグナル経路の役割(京大瀬原博士)。側線神経細胞損傷後の修復過程の可視化(ドイツ Lopez-Schier博士)。神経軸索の枝分かれのメカニズムの解明(フランス Del Bene博士)。松果体の新規オプシン分子の機能解明(大阪市立大寺北博士)。糖尿病関連遺伝子FTO近傍のエンハンサー解析(オーストラリア Becker博士)。モヤモヤ病原因遺伝子の機能解析(京産大永田博士)。血管内皮細胞のカルシウムイメージング(国立循環器病研究センター望月博士)。脳脊髄液接触神経細胞の運動における役割(フランス脳脊髄研究所Wyart博士)。カルシウムシグナルデータの解析システムの開発(国立情報研北本博士)。これらの研究成果を英文論文9報として発表した。(3)トランスジェニックフィッシュ349系統の成体の脳を解析し、脳の様々な領域でGal4を特異的に発現する系統を77系統同定することに成功した。また恐怖条件付け学習のアッセイシステムの構築に成功した。Gal4発現フィッシュ系統を用いて神経毒素を特異的な神経細胞に発現させ、それらの機能を阻害し行動解析実験を行うことにより、恐怖条件付け学習に必須な脳神経回路の同定に成功した。
1: 当初の計画以上に進展している
(1)細胞・組織・器官特異的にGal4を発現するトランスジェニックフィッシュを選別する大規模スクリーニングを実施し、新規に120系統を作製することができたから。(当初予定は100系統)(2)国内外の研究者との共同研究の成果として査読付き英文論文9報を発表することができたから。またトランスポソンテクノロジーを哺乳動物細胞、ニワトリで用いた関連英文論文2報を発表することができたから。(3)トランスジェニックフィッシュ系統349系統から、脳の様々な領域でGal4を特異的に発現するフィッシュ系統を77系統同定することに成功し、ゼブラフィッシュを用いて行動と機能的神経回路を研究するための基盤を構築することができたから。
(1)モデル脊椎動物ゼブラフィッシュにおいて、Tol2を用いた遺伝子トラップコンストラクトをもつプラスミドDNAを、転移酵素mRNAとともに受精卵にインジェクションし、細胞・組織・器官特異的に改変型酵母転写因子Gal4FFを発現するトランスジェニックフィッシュを新規に樹立する研究を継続する。さらにこれらトランスジェニックフィッシュのサザンブロット解析、インバースPCRによるTol2挿入部位近傍のゲノムDNAの解析を進め挿入部位を決定する。これらの発現情報、遺伝子情報をとりこんだデータベースを整備・発展させる。(2)細胞・組織・器官特異的にGal4を発現するトランスジェニックフィッシュを基にした共同研究のさらなる展開・発展をはかる。連携研究者:石谷太(群馬大、脳、消化器官、Wntシグナル)、伊藤素行(千葉大、Notchシグナル、神経発生)、稲垣直之(奈良先端大、神経発生、軸索伸長)、小椋利彦(東北大、心臓形成)、川上厚志(東工大、ヒレの再生・形成)、瀬原敦子(京都大、筋肉・腱組織)、田村宏治(東北大、付属肢(ヒレ)の発生と再生)、東島眞一(岡崎統合バイオ、脊髄神経回路)、平田普三(青山学院大、運動システム)、弥益恭(埼玉大、脳原基の領域化と脳機能発達)、山本直行(名古屋大、感覚神経路)、日比正彦(名古屋大、小脳)、藤田深里(神奈川大、血管形成)、およびその他の国内外の研究者と共同研究を推進する。(3)トランスジェニックゼブラフィッシュ系統を用いて、中枢神経系におけるGal4の発現パターン解析を継続して行い、特定の脳神経回路にGal4を発現するトランスジェニックフィッシュ系統の同定を推進する。これらを基にして、神経細胞の活動の可視化、機能阻害を可能にし脊椎動物の記憶・学習等複雑な行動を司る脳神経回路機能を解析するための新しい基盤を構築する研究を推進する。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 7件、 査読あり 12件、 オープンアクセス 12件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 6件、 招待講演 7件) 備考 (2件)
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