1)LEAタンパク質の非繰返しアミノ酸配列部位の機能を調べるため、ネムリユスリカのPvLEA4タンパク質のN末端側およびC末端側22-merのモデル化合物を設計・合成しin vitroの実験により機能を調べた。その結果、酵素(LDHや)やリポソームに対し乾燥保護活性を示すことが明らかとなった。 2)PvLEA-22ペプチドの熱ストレス保護剤としてのメカニズムを解明するため、変性温度以上および室温におけるリゾチームとの相互作用をSIRAH力場を用いた粗視化分子動力学シミュレーションにより調べた。その結果、このペプチドはタンパク質表面に結合しシールディングすることにより変性に伴う凝集を抑制することが判明した。 3)トレハロース脂質/DMPC混合二重膜の性質をAFM測定やall-atomおよびMARTINI力場による粗視化分子動力学シミュレーションにより調べた。その結果、この両脂質はゲル-液晶転移点以上では均一に混合し、トレハロース脂質の割合が増加するにつれて、親水性が増大し、弾性率も増大するが、脂質鎖の秩序性は減少することが明らかとなった。また、トレハロース脂質を70 %含む膜では、がん細胞モデル膜や正常細胞モデル膜と強く相互作用し融合の前兆現象と見られる挙動が観察された。 4)CRISPR-PITCh法により、Pv11細胞においても、任意の配列をゲノム上に挿入することができるようになった。そこで、乾燥耐性能を保持したまま外来遺伝子を安定的に発現できる実験系の構築を行った。Pv11細胞において、恒常的に高発現している遺伝子の3’領域にAcGFP1およびzeocin耐性遺伝子をノックインすることで、上記の目的を達成できた。また、蛍光センサータンパク質の安定発現株の樹立にも成功し、Pv11細胞の乾燥耐性メカニズムの解明に有用な実験系であることが示唆された。
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