研究実績の概要 |
これまでに、細胞抽出液を用いた試験管内反応の結果から、CCR4-NOT複合体を介したmicroRNAによるpoly(A)の分解はATPを必須とするという知見を得ていた。microRNAと同様にCCR4-NOT複合体を用いるSmaugなどのRNA結合タンパク質によるpoly(A)分解反応についても、細胞抽出液を用いた実験から、やはりATPが必要であるということが報告されていた。しかし、CCR4-NOT複合体に含まれるCCR4とCAF1という2つの脱アデニル化酵素は、どちらも共に単体ではその脱アデニル化反応にATPを必要としない。従って、microRNAやSmaugによる脱アデニル化にATPがなぜ、どこの段階で必要なのかは大きな謎として残されていた。そこで、ADPをATPに再生するクレアチンキナーゼ、ATPをADPに分解するヘキソキナーゼ、さらにAMPをアデノシンとリン酸に分解する5'ヌクレオチダーゼなどを組み合わせ、様々な脱アデニル化反応条件におけるATP, ADP, AMPの存在比と脱アデニル化反応効率を詳細に比較して検討したところ、細胞抽出液を用いた実験系では、ATPの再生系非存在下において、ATPはすみやかにAMPに分解され、その蓄積したAMPこそが脱アデニル化反応を強力に阻害しているということが明らかとなった。つまり、microRNAやSmaugによる脱アデニル化反応においては、「ATPの枯渇」ではなく「AMPの蓄積」が反応を阻害を阻害していたということが示された。これはmicroRNAだけではなくSmaugなど脱アデニル化反応を誘導するRNA結合タンパク質の動作原理を考える上で重要な知見である。またmicroRNAによる翻訳抑制についても、培養細胞やハエ個体を用いた解析を進め、脱アデニル化反応と切り分けて解析できる目処を付けることができた。
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