研究課題/領域番号 |
15H02384
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
前仲 勝実 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (10322752)
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研究分担者 |
福原 秀雄 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 特任助教 (80707191)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ウイルス / X線結晶構造解析 / 膜融合 / 細胞表面受容体 / ワクチン / 抗体 / ジステンパーウイルス |
研究実績の概要 |
サルへの感染が最近報告されてきた致死率の高いジステンパーウイルス(CDV)は、ヒト感染の脅威が懸念されている。まずは近縁の麻疹ウイルスについて侵入受容体と受容体結合H蛋白質との複合体の立体構造決定などの細胞侵入機構を世界に先駆けて明らかにしてきた実績を活かして、CDVの細胞侵入および宿主特異性の分子基盤の解明を進めた。CDV-Hについては、電子顕微鏡により観察する事で、ユニークな高次構造を見出し、また動的挙動についても考察することができた。次に、CDV-Fについては、その構造的な特徴を明確に撮られることができたため、他のパラミクソウイルスとの比較も可能となった。次に、宿主特異性については、サルに感染する株由来の受容体結合を担うH蛋白質のヘッドドメインについてHEK293細胞を用いて、調製法の検討を進めたが、X線結晶構造解析には十分な量は得られなかった。他方、少量ではあるが、得られたサルに感染する株由来のH蛋白質を用いて、イヌおよびヒトの受容体SLAMやNectinとの結合特異性を解析した。 次にワクチンの有効性について記述する。CDVは幸いにも弱毒生ワクチンは大変有効で有効である。また、近縁の麻疹ウイルス(MV)に対するワクチン接種がヒトで大変有効である。これについては、中和抗体がすでに得られているMV-Hを先行して進めているが、2種類の中和抗体のうち一つは一本鎖Fv断片として大腸菌で封入体として発現させ、巻き戻しに成功した。MV-Hとの結合活性を評価できる状態となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたCDV-Hと受容体の複合体についての結合解析は予定通り、良い組み合わせを見つけることができた。また、MV-Hに対する抗体の作製とその性格付けの準備が整い、ワクチンの基盤の解明に着実に近づいている。
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今後の研究の推進方策 |
通常のCDV-HおよびCDV-Fについては、電子顕微鏡解析をさらに進めるため、抗体等を用いた詳細な検討を行う。可能であれば、単粒子解析も検討する。また、X線結晶構造解析も念頭に、さらにコンストラクトの改良や変異体の作成に取り組む。 次に、サルに感染する株のCDV-Hの調製は難航しているが、現時点で解明できている良い組み合わせのCDV-HとSLAMおよびNectin4 複合体の結晶化を目指す。工夫として遺伝子工学的に一本鎖化して複合体を調製することも検討し、調製できれば結晶化に進める。もし難しい場合には、これらの組換え蛋白質を用いて、クライオ電子顕微鏡の利用も検討すると同時に、詳細なSPRやITCを用いた結合解析も進める予定である。
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