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2016 年度 実績報告書

神経軸索再生を制御するシグナル伝達の分子機構

研究課題

研究課題/領域番号 15H02388
研究機関名古屋大学

研究代表者

松本 邦弘  名古屋大学, 理学研究科, 教授 (70116375)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2019-03-31
キーワード遺伝学 / 再生医学 / シグナル伝達 / 神経科学 / 脳・神経
研究実績の概要

平成28年度は、(1) JNK MAPキナーゼ(MAPK)、p38 MAPK、cAMP経路からなる軸索再生制御ネットワークの解明として、新たに受容体型チロシンキナーゼDDR-2がJNK経路を通じて神経軸索再生を制御することを見出した。遺伝学的解析から、DDR-2の作用点は受容体型チロシンキナーゼSVH-2の上流であることが明らかとなった。さらに、DDR-2の哺乳動物ホモログがコラーゲンにより活性化することから、線虫DDR-2のリガンドを探索した結果、IV型コラーゲンがその上流で機能することを遺伝学的に確認した。さらに、生化学的な解析により、DDR-2の細胞質ドメインはアダプタータンパク質SHC-1と常に結合しており、SHC-1を介して増殖因子により活性化されたSVH-2と複合体を形成することも見出した。以上のことから、コラーゲンにより活性化したDDR-2は、SHC-1およびSVH-2と複合体を形成することで、神経軸索再生を制御することが示された。本成果は、PLOS Geneticsに掲載された。
(2) MLK-1 MAPKKKのdual phosphorylationによる制御については、昨年度に報告したセロトニンによるMLK-1 セリンリン酸化制御が成虫期でのみ機能していたことから、幼虫期の神経軸索再生におけるセリンリン酸化経路について探索した。その結果、MAP4KであるMAX-2が幼虫期におけるセリンリン酸化を担っていることが判明した。さらに、MAX-2はGTP-結合タンパク質Racにより活性化され、Racはインテグリン-Rac GEF経路により活性化されることで、神経軸索再生を促進することが明らかになった。本成果はJournal of Neuroscienceに掲載された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初計画のうち、(1) JNK, p38, cAMP経路からなる軸索再生制御ネットワークの解明については、新たに受容体型チロシンキナーゼDDR-2がJNK経路を通じて神経軸索再生を制御することを見出した。さらに、DDR-2がSHC-1を介してSVH-2に結合することで、神経軸索再生を制御することを明らかにした。この成果については、最終的に論文として発表した。
また、(2) MLK-1のdual phosphorylationによる制御についても、昨年度報告したセロトニン-Gα12-RHO-PKC経路とは別に、MAP4KであるMAX-2によるMLK-1のセリンリン酸化の制御を新たに見出し、その上流でインテグリン-Rac GEF-Rac経路が機能することも明らかにした。この成果についても、論文として発表した。上述の研究計画の進捗については、当初の予定より早く、かつ当初は予期していなかった驚くべき制御系の発見に繋がっている点で、当初の予想以上の成果を収めたと言える。
(3) RHO-1による軸索再生制御とJNK経路との関係の解析についても、BRCA2の線虫ホモログBRC-2によるRho経路上での役割について解析を進めており、BRC-2に結合する因子を新たに同定している。以上のことから、(3)の進捗状況も十分であると言える。

今後の研究の推進方策

今後は、平成28年度までに発見したインテグリン-Rac GEF-Rac-MAX-2経路について、その上流で機能する細胞外因子の探索を行う。我々はこれまでに、神経軸索再生制御に関わる因子の候補として92個の遺伝子を同定しており、その多くが未解析であるが、その中には複数の細胞外分泌因子が存在している。それらのうちのどれかが、インテグリンに結合して神経軸索再生を制御する可能性が考えられる。そこでまず、それらの分泌因子の中から、神経軸索再生に関与するものがあるかどうか、変異体を用いて同定する。同定後は、それがインテグリン-Rac GEF-Rac-MAX-2経路上で機能するか遺伝学的に解析を行う。さらに、インテグリンと結合するか、生化学的手法により検討する。それにより、神経軸索再生においてインテグリンの上流で機能する分泌因子を同定する。
また、(3) RHO-1による軸索再生制御とJNK経路との関係の解析については、BRCA2の線虫ホモログBRC-2がRho経路上で機能することまではわかっているが、どのような因子に作用して機能しているかは不明である。そこで、Rho、LET-502やMLC-4などのRho経路で機能する他の因子とBRC-2の相互作用について、生化学および酵母Y2H法により検討する。一方、BRC-2に結合する因子として同定されたALP-1については、神経軸索再生への関与の有無を明らかにする。神経軸索再生に関わることが判明した場合には、これがRho経路上で機能するのかについて検討する。さらに、ALP-1に結合する因子についても探索する。

  • 研究成果

    (16件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (10件)

  • [雑誌論文] UNC-16/JIP3 regulates early events in synaptic vesicle protein trafficking via LRK-1/LRRK2 and AP complexes2017

    • 著者名/発表者名
      Choudhary, B., Kamak, M., Ratnakaran, N., Kumar, J., Awasthi, A., Li, C., Nguyen, K., Matsumoto, K., Hisamoto, N., Koushika, S.P.
    • 雑誌名

      PLoS Genet.

      巻: 13 ページ: 1007100

    • DOI

      10.1371/journal.pgen.1007100

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Signal transduction cascades in axon regeneration: insights from C. elegans2017

    • 著者名/発表者名
      Hisamoto Naoki、Matsumoto Kunihiro
    • 雑誌名

      Curr. Opin. Genet. Dev.

      巻: 44 ページ: 54~60

    • DOI

      10.1016/j.gde.2017.01.010

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Chaperone complex BAG2-HSC70 regulates localization of Caenorhabditis elegans leucine-rich repeat kinase LRK-1 to the Golgi2016

    • 著者名/発表者名
      Fukuzono Takashi、Pastuhov Strahil Iv.、Fukushima Okinobu、Li Chun、Hattori Ayuna、Iemura Shun-ichiro、Natsume Tohru、Shibuya Hiroshi、Hanafusa Hiroshi、Matsumoto Kunihiro、Hisamoto Naoki
    • 雑誌名

      Genes Cells

      巻: 21 ページ: 311~324

    • DOI

      10.1111/gtc.12338

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Endocannabinoid signaling regulates regenerative axon navigation in Caenorhabditis elegans via the GPCRs NPR-19 and NPR-322016

    • 著者名/発表者名
      Pastuhov Strahil Iv.、Matsumoto Kunihiro、Hisamoto Naoki
    • 雑誌名

      Genes Cells

      巻: 21 ページ: 696~705

    • DOI

      10.1111/gtc.12377

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] The core molecular machinery used for engulfment of apoptotic cells regulates the JNK pathway mediating axon regeneration in Caenorhabditis elegans.2016

    • 著者名/発表者名
      Pastuhov, S., Fujiki, K., Tsuge, A., Asai, K., Ishikawa, S., Hirose, K., Matsumoto, K., Hisamoto, N.
    • 雑誌名

      J. Neurosic.

      巻: 36 ページ: 9710-9721

    • DOI

      10.1523/JNEUROSCI.0453-16.2016

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] The C. elegans Discoidin Domain Receptor DDR-2 Modulates the Met-like RTK-JNK Signaling Pathway in Axon Regeneration2016

    • 著者名/発表者名
      Hisamoto Naoki、Nagamori Yuki、Shimizu Tatsuhiro、Pastuhov Strahil I.、Matsumoto Kunihiro
    • 雑誌名

      PLoS Genet.

      巻: 12 ページ: e1006475

    • DOI

      10.1371/journal.pgen.1006475

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 線虫EnigmaホモログによるRhoキナーゼ シグナルを介した神経軸索再生制御2017

    • 著者名/発表者名
      清水達太、松本邦弘、 久本直毅
    • 学会等名
      2017年度生命科学系学会 合同年次大会
  • [学会発表] 線虫においてコンドロイチン硫酸は加齢依存的な神経軸索の再生能低下に関与する2017

    • 著者名/発表者名
      竹生実希子、松本邦弘、久本直毅
    • 学会等名
      2017年度生命科学系学会 合同年次大会
  • [学会発表] The role of serotonin in C. elegans axon regeneration2017

    • 著者名/発表者名
      久本 直毅、松本 邦弘
    • 学会等名
      International Workshop on NeuroScience
  • [学会発表] Discoidin Domain Receptor DDR-2 Modulates the Met-like RTK-JNK Signaling Pathway in Axon Regeneration.2017

    • 著者名/発表者名
      清水 達太、ストラヒル パストゥホフ、久本 直毅、松本 邦弘
    • 学会等名
      21st International C. elegans Conference
  • [学会発表] N‐glycosylation is required for axon regeneration in Caenorhabditis elegans through modification of discoidin domain receptor2017

    • 著者名/発表者名
      竹生 実希子、久本 直毅、松本 邦弘
    • 学会等名
      21st International C. elegans Conference
  • [学会発表] Axon regeneration is regulated by Ets-C/EBP transcription complexes generated by activation of the cAMP/Ca2+ signaling pathways2016

    • 著者名/発表者名
      李 春、久本 直毅、松本邦弘
    • 学会等名
      7th Asia-pacific C.elegans Meeting
  • [学会発表] Axotomy-induced HIF-serotonin signalling axis promotes axon regeneration in C. elegans2016

    • 著者名/発表者名
      アラム タニムル、丸山 裕生、李 春、ストラヒル パストゥホフ、ニックス パオラ、バスティアーニ マイケル、久本 直毅、松本 邦弘
    • 学会等名
      CeNeuro2016
  • [学会発表] Rhoシグナル伝達経路はアクチン/ミオシン細胞骨格の再構成を介して線虫の神経軸索再生を制御する2016

    • 著者名/発表者名
      アラム タニムル、久本 直毅、松本 邦弘
    • 学会等名
      第39回日本分子生物学会年会
  • [学会発表] 細胞死シグナルによる神経軸索再生の制御機構2016

    • 著者名/発表者名
      柘植 杏菜、久本 直毅、 松本 邦弘
    • 学会等名
      第39回日本分子生物学会年会
  • [学会発表] 乳癌原因遺伝子BRCA2の線虫ホモログBR C-2はRho-ROCK-MLCリン酸化経路で神経軸索再生を制御する2016

    • 著者名/発表者名
      清水 達太、久本 直毅、松本 邦弘
    • 学会等名
      第39回日本分子生物学会年会

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公開日: 2018-12-17  

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