現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々のこれまでの研究で、RAF分子のS259, S338/9, S621のリン酸化が構造制御に関わることが分かっている。中でもS338/9のリン酸化はRAFの構造を開き、活性を上昇させる。またY340/1も活性制御に関わるリン酸化部位と言われているが、その働きは先行研究間で不一致が見られ、詳細は明らかでない。野生型及びS338/9, Y340/1のリン酸化(D置換)・非リン酸化(A置換)模倣変異体8種を作成し、EGF添加前後の細胞内構造をFRET計測すると共に、S259, S621のリン酸化計測を行った。その結果、S259とS621のリン酸化は共同的に起こりRAFの構造を閉じるが、EGFにより両部位が脱リン酸化して構造が開くこと、S338/9のリン酸化は単独ではRAFの構造と相関せず、Y340/1のリン酸化は構造を閉じてEGFによる構造変化を抑制するが、S338/9, Y340/1のリン酸化が同時に起こるとRAFの構造が開いてEGF応答が大きくなることなど、複雑に相関したリン酸化制御が示唆された。 また、細胞内RAFの構造分布と活性化型RASの認識反応を計測するため、蛍光プローブRAFを発現した細胞を破砕して得た細胞質中のRAF分子を、ガラス基盤に固定した活性型RASと相互作用させ、1分子FRETによるRAF構造の計測とRAS/RAF間の結合・解離反応計測を行う実験系を構築した。現在、RAS/RAFの結合時間分布計測から、RAFの活性と構造の関係が明らかになりつつある。この方法は、RAFだけでなく、RalGDSやPI3Kなど多くのRASエフェクターの活性計測に応用可能である。
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