研究課題/領域番号 |
15H02398
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
稲垣 昌樹 三重大学, 医学系研究科, 教授 (30183007)
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研究分担者 |
後藤 英仁 愛知県がんセンター(研究所), 腫瘍医化学部, 室長 (20393126)
井澤 一郎 愛知県がんセンター(研究所), 腫瘍医化学部, 室長 (20311441)
笠原 広介 三重大学, 医学系研究科, 准教授 (90455535)
田中 宏樹 愛知県がんセンター(研究所), 腫瘍医化学部, リサーチレジデント (20725452)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 中間径フィラメント / 細胞質分裂 / 染色体不安定性 / 老化 / がん化 |
研究実績の概要 |
染色体の異数性(aneuploidy)が癌や老化、分化などに与える影響及び、細胞が染色体異数性を引き起こすメカニズムについて検討を進めてきた。既に研究代表者らは中間系フィラメントの一つであるデスミンの分裂期リン酸化が正常な細胞分裂に必要であること、そして正常な細胞分裂が起きない細胞では染色体異数性を引き起こすことを明らかにしてきた。研究代表者らは今回、ヒト・デスミンの新たな分裂期リン酸化部位としてセリン6、セリン27、セリン31を同定し、これらのセリン残機をリン酸化する酵素(キナーゼ)としてCyclin-dependent kinase 1(Cdk1)を同定した。さらに、リン酸化セリン31に対する抗体(TD31)を作製して細胞内の時空間的解析を行ったところ、デスミンは分裂期前期から前中期にかけてcytoplasm全体でリン酸化されていた。また、これらのリン酸化部位をアラニン置換したリン酸化不全デスミン変異体を発現させた細胞では細胞質分裂が正常に起こらないことを明らかにした。このリン酸化の生理的な意義を解析するため、マウス胎児や新生児の筋組織、ヒト横紋筋組織を用いて解析したところ、分裂期細胞でデスミンの著しいリン酸化を検出した。本成果によって、染色体異数性の原因となりうる細胞質分裂異常のメカニズムの一端が明らかとなった。さらに作製したリン酸化抗体TD31は、横紋期肉腫の診断において有用なツールとなりうることも示した。現在、上記リン酸化部位に変異を加えたノックインマウスの作製を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
染色体異数性におけるデスミンリン酸化の生理的意義を細胞レベルで明らかに成功したため。
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今後の研究の推進方策 |
筋細胞に特異的に発現する中間径フィラメントであるデスミンの分裂期リン酸化不全型ノックインマウスのホモ接合体を作製し、解析を進めていく。特に、老化と心臓の機能不全に深い関連があることが推測されるので、このマウスにおいて寿命や心機能の解析を中心に行う。
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