研究課題
本研究では、複数の脊椎動物種を用い、筋肉と骨格の前駆細胞の挙動と胚環境、その背景にある遺伝子相互作用を比較し、筋・骨格・神経ユニットの進化シナリオを復元することを目指す。平成27年度は、脊椎動物頭部の進化に着目し、共通祖先における頭部中胚葉形成機構を探る目的で、脊索動物ナメクジウオを用い、遺伝子発現パターンの比較と機能解析を行った。これまで脊椎動物の背側中胚葉の前後軸形成において、頭部と体幹部の領域化に関わる遺伝子群 (gsc, bra, deltaなど)が報告されている。これらの相同遺伝子の発現ドメインは、原腸胚初期には脊椎動物と同様に発現領域が大きく重なり、ナメクジウオでは発生を通じてその状態が続く一方、脊椎動物胚(ヤツメウナギ、トラザメ、カエル)では頭部/体幹部予定領域に分離した。が、カエル原腸胚において脊椎動物特異的な中胚葉の細胞運動を阻害すると、ナメクジウオ胚的な発生を模倣した。つまり、脊椎動物の祖先において、頭部と体幹の中胚葉を特異化する遺伝子群の制御が前後軸にそって分かれたことが示唆される。また、脊椎動物の頭部中胚葉がナメクジウオのような筋節から直接進化したのではなく、前後軸に沿った遺伝的変容を背景とする新規形質であることも示唆された。また、本研究では、哺乳類のみで頚部体節から発生する横隔膜がどのような発生機構の変化で獲得されたものなのか、という問題にも取り組んでいる。そのための最初のステップとして、マウス、ニワトリおよびアホロートルとの比較を通じて羊膜類の頚部発生の祖先状態を推定するというアプローチを展開してきた。平成27年度は、特に、頚部から前肢芽にかけての領域におけるHox遺伝子、Hgfの発現パターンの解析を進めた。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度はナメクジウオを含め、多数の希少種の胚を用いて実験し、結果を比較検討することができた。また新規の研究機器を用いた実験・観察を効率的に進めることができた。
平成28年度以降、上記の動物種に加え、ヤツメウナギやトラザメの胚を用いた解析を進める。頸部における中胚葉や神経系細胞の分布を分子マーカー(RNAプローブ、抗体)により解析し、それが鰓弓との位置関係においてどのような機能的・発生学的な連関をもつかを明らかにする。並行して、哺乳類における横隔膜の獲得についての仮説を検証する実験を行う。ここでは、祖先動物における頸部−胸部移行レベルで生じたホメオティック変異が横隔膜の分化を許容したという仮説について、遺伝子操作実験を行う予定である。得られた結果を脊椎動物間で比較し、頸部における複雑な形態の創出について進化的に考察する。
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