研究課題/領域番号 |
15H02418
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
北野 潤 国立遺伝学研究所, 集団遺伝研究系, 教授 (80346105)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 適応放散 / トゲウオ / 種分化 / 不飽和脂肪酸 / 一細胞解析 |
研究実績の概要 |
日本と北米とヨーロッパのトゲウオ試料を集め、これらよりDNAを精製した。これらについて定量PCR法にてfads2のコピー数変異を解析した。その結果、淡水化に伴ってfads2のコピー数が上昇する傾向を複数の独立した系統で観察した。また、日本の太平洋イトヨについて、多価不飽和脂肪酸合成酵素を含むfosmidを同定し、シークエンスを実施した結果、当該fosmidは染色体19番(X染色体)由来であることが明らかになった。さらに参照配列(アラスカ湖産)と配列を比較したところ、一部、配列の異なる領域も見つかっており現在詳細な解析を実施中である。また、淡水進出に伴って変化する甲状腺刺激ホルモンの解析のためにイトヨの下垂体を太平洋集団のイトヨから採取し、高い生存率を保って細胞を分離する方法を見いだした。これはトリプシンとEDTAを用いたものである。その結果、イトヨの下垂体の多くの細胞のサイズが直径10 um以下と小さいことが明らかになった。その後、Fluidigm C1を用いてcDNAを合成した。これらcDNAのいくつかについて、下垂体に発現するホルモンの遺伝子の複数について定量PCRを実施した結果、PRL産生細胞などに加えて、TSHB2発現細胞も確認できた。さらにこれらを次世代シークエンサーで解析し、下垂体のTSH産生細胞のキャラクタライズに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
すでに不飽和脂肪酸代謝の違いが淡水進出に果たす役割について、海外のトゲウオ集団、並びに近縁のカジカなどでの検証でも実施し、最初の論文執筆に取りかかれる状況になったから。また、トランスジェニクの系統樹立にも既に成功しているから。さらに、下垂体の一細胞解析に成功したが、下垂体の一細胞解析はトゲウオに限らずこれまでに世界で実施された例はないと考えられるから。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果をひとまず論文にまとめる。fads2のトランスジェニクイトヨとTHSB2のノックアウトイトヨを利用して行動や生殖などの表現型への影響、および、環境適応能力についての検証実験を実施する。
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