研究課題/領域番号 |
15H02426
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
樋口 重和 九州大学, 芸術工学研究院, 教授 (00292376)
|
研究分担者 |
森田 健 福岡女子大学, 人間環境学研究科, 教授 (20326474)
黒川 修行 宮城教育大学, 教育学部, 准教授 (30431505)
太田 英伸 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 精神生理研究部, 研究生 (80422103)
北村 真吾 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 精神生理研究部, 室長 (80570291)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 概日リズム / メラトニン / 光環境 / 子ども / 睡眠 |
研究実績の概要 |
本年度は人工照明の少ない自然の中でキャンプ生活を行う子どもたちの概日リズムを測定するための実験を実施した。夏休みの30泊31日キャンプに参加する21名の子どもを対象に、キャンプ開始前の概日リズム位相とキャンプ中の概日リズム位相を調べた。概日リズムの位相の評価は唾液中のメラトニン濃度を用いた。概日リズム位相以外の調査項目として、睡眠日誌、腕時計型の行動量計を用いた睡眠評価、日中と夜の光曝露量、尿中のメラトニン代謝産物の分析を行った。調査はキャンプ初日とキャンプ中盤(11日目)の2回実施した。メラトニンの分析はRIA法で分析した。キャンプ中、夜の日没後は白熱電球を利用し、睡眠と覚醒のスケジュールは原則として消灯時刻が19:30、起床時刻が4:00であった。キャンプ中はキャンプ前に比べて概日リズムの位相が平均で約2時間前進していた。この前進量はキャンプによる就寝と覚醒時刻が早まった量とほぼ一致していた。また、概日リズムが夜型の子どもほど位相の前進量も大きいことが分かった。概日リズムの位相の前進は、キャンプ中の早寝早起きと早朝の強い太陽光への光曝露および夕方の薄暗い環境が影響していたと考えられる。一方で、キャンプ中は昼間にたくさん光を浴びることから、夜間のメラトニン分泌量が増えていると予想していたが、キャンプ前とキャンプ中で有意な差が見られなかった。今後は具体的な光曝露量の分析を進め、子どもの光と概日リズムの関係をより詳細に明らかにしていく必要がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、人工照明の影響をできるだけ受けない環境での、子どもの概日リズムの特性を調べるために、自然の中でキャンプ生活を行う子どものデータを測定することができた。一方で、小学校を対象としたフィールド調査では、睡眠に関するアンケート調査を始めているが、客観的なデータ(行動量、光曝露量、メラトニン分泌量など)取得には至っていない。 一年目の行った二つの実験(光によるメラトニン抑制実験、行動量計を用いた睡眠評価の妥当性検証の実験)については、その成果を国内外の学会で発表したが、論文投稿には至っていない。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は昨年度に引き続き、キャンプに参加する子どものデータを追加で測定する予定である。追加の測定項目としては、概日リズムの位相以外にも光の非視覚的な影響を調べる実験なども検討している。成長や発達とメラトニン及び睡眠の関係を調べるための研究については、当初は小学生を対象とした追跡調査を計画していたが、実施が困難なため、中学生を対象にした後ろ向き研究に切り替えることを検討している。実験や調査以外では、1年目と2年目に実験したデータをまとめ、学会発表や論文執筆を行う予定である。
|