研究課題
1.ニューロン特異的OXTR遺伝子欠損マウス解析:縫線核5-HTニューロンに発現するOXTRの機能解析の為、「社会的報酬」行動測定装置設計と行動測定法習得を行った。解析対象マウスは交配・繁殖中である。2.妊娠齧歯類モデルへのOXT長期投与と産子・母親への副次効果について:産仔への外来性OXT投与の副作用を明確にする為、妊娠後期に3 IU~6IU程度のOXTを母体へ継続投与、これが発生後期胎児脳へ与える影響と、生後の社会行動に与える影響解析したが、大きな影響は見いだしていない(東大、山末准教授と西森)。陣痛促進剤としてヒト妊婦へOXTを投与したケースの出生後の子供への影響について:環境省のエコチル研究結果から、母児の健康状態とOXT投与との関係に関するdataを解析した。今後解析を拡大する必要がある。(大阪大学、木村正教授)3.抗骨粗鬆薬としてのOXT・受容体系が持つ可能性につき、OXT・OXTR 遺伝子欠損マウスモデルでの産褥期骨代謝の解析:未経産OXTR KOマウスとwtマウスにつき、交配後19.5日目の朝、出産確認後に試料調整し、大腿骨のpQCT測定による骨密度測定を行なった。wtは10-17週令, OXTR(-/-)は12-22週令を測定に用い、全骨密度と皮質骨密度はOXTR-/-<wt、海綿骨密度はOXTR-/->wtであった。4.OXTR KO 平原ハタネズミの開発:高度社会性平原ハタネズミの過排卵処理と胚培養技術、in vitroにおける受精などの発生・生殖工学技術を樹立し論文発表した。5. OXTRアゴニストのスクリーニング系樹立と新規OXTRアゴニスト開発:CMVプロモーター下流にヒトOXTRcDNAを挿入した発現ベクター、同改変TGFα(Ap-TGFα)発現ベクターを293細胞に感染させ、96wellsでのスクリーニング系を立ち上げた。(青木教授と西森)
2: おおむね順調に進展している
「ニューロン特異的OXTR(-/-)マウス解析」については実績概要にも触れたが、解析対象の変異体マウスの増産に予想以上に時間が掛かり、解析自体はやや遅れているが、変異マウスを対象とした行動解析は本来時間を要すものであり、着実にデータを積み上げて行きたい。「妊娠齧歯類モデルへのOXT長期投与と産子・母親への副次効果について」は予想と異なり、妊娠後期に生理的な濃度を超えるOXTを母体へ投与する限りは、胎児脳や、産仔の生後の社会行動に大きな影響を与えない興味深い事実が明らかとなり、これについて現在論文投稿ちゅうである。27年度には行わなかった、妊娠前期でのOXT投与の胎児脳発達等に与える影響の解析も重要であり、今後この方向への実験の拡大を考慮する。「陣痛促進剤としてヒト妊婦へOXTを投与したケースの出生後の子供への影響について」はdata解析に人員が必要であるが、その確保が必ずしも達成できず、解析耐性態勢の見直しも必要である。「抗骨粗鬆薬としてのOXT・受容体系が持つ可能性につき、OXT・OXTR 遺伝子欠損マウスモデルでの産褥期骨代謝の解析」については、検体数は必ずしも多くはないが、一定の傾向が得られ、今後試料数を拡大してデータの一層の蓄積を果たす。「OXTR KO 平原ハタネズミの開発」については、平原ハタネズミの過排卵処理と胚培養技術の達成を基に、in vitro受精法など発生・生殖工学技樹立にもこぎつけ、当初予測よりも遙かに順調に進捗している。今後、世界初の遺伝子操作平原ハタネズミ解析なども可能となるであろう。「OXTRアゴニストのスクリーニング系樹立と新規OXTRアゴニスト開発」についても当初予測よりも順調に進捗し幾つかのOXTRアゴニスト候補の取得まで達成している。今後スクリーニングサイズを拡大し、新規自閉症薬(合成OXTRアゴニスト)開発にこぎつけたい。
ePet-Creを用いた、縫線核セロトニンニューロンで発現するオキシトシン受容体機能解析は、必要な2重、又は3重変異マウスの繁殖・準備が整い次第開始する。本実験では3重変異体マウスを用いるので実験対象マウス確保に時間が掛かる事、対象マウス取得の歩留まりが悪く、当初計画より時間が掛かる事が予想されるが、確実に実験を進めていく。また神経回路の解析は、当初、OXTR.cDNA.HA-IRES-Creマウスなどを用い、順行性ないし逆行性の蛍光色素標識した融合蛋白をAAVにより対象神経核に送り込み、部位特異的に解剖学的な解析を進めていく計画だったが2光子顕微鏡を色素標識した連続脳スライス切片に適用する新規方法(Cell Rep 10, 292, 2015)につきPenn州立大学のDr. Kimより網羅的な神経回路3次元Map作製に関する共同研究の誘いがあり、この方法の積極的な適用拡大により短期間に対照領域(縫線核)の特異的なニューロン(OXTR発現性5-HTニューロン等)を含む神経回路アトラス作製を行う方法の採用を計画しており、最終ゴールに対し先進的な方法の採用で、短期間に発展的・広範囲に目的を達成する事を目指す。エコチルdata解析は人員的な問題などから、解析スケールの拡大には至っていないが、今後も継続的に行う予定である。骨粗鬆症とOXT・受容体系の関連について、特に妊娠マウスでのOXT又はOXTR遺伝子欠損が骨形成へ与える影響について妊娠マウスでOXT・受容体系の欠損の影響が強く出る可能性が見られたが今後dataセットを増やしていく計画である。平原ハタネズミの遺伝子改変については組み替え体Cas9蛋白の利用により組み替え効率が著しく向上しており、計画に加えOXTR-EGFP、LoxP型OXTR KO、V1aR KOなど本領域研究全体の推進に役立つラインの作製も考慮する。
すべて 2017 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (13件) (うち国際共著 4件、 査読あり 13件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (23件) (うち国際学会 3件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
Biological Psychiatry
巻: 81 ページ: 243~251
10.1016/j.biopsych.2015.11.021
J Cell Biochem
巻: 117 ページ: 1099-1111
10.1002/jcb.25393
J Cell Physiol
巻: 231 ページ: 887-895
10.1002/jcp.25180
Exp Anim
巻: 65 ページ: 87-96
10.1538/expanim.15-0061
Biochem Biophys Res Commun
巻: 472 ページ: 319-23
10.1016/j.bbrc.2016.02.109
Cell Transplant
巻: 25 ページ: 1-46
10.3727/096368916X690502
Neuroendocrinology
巻: 101 ページ: 35-44
10.1159/000371636
Neuropsychopharmacology
巻: 40 ページ: 2337-2346
10.1038/npp.2015.81
J. Neuroendocrinol
巻: 27 ページ: 335-342
10.1111/jne.12268
Biol Reprod
巻: 93 ページ: 1-11
10.1095/biolreprod.114.123638
Front Endocrinol
巻: 6 ページ: 180-190
10.3389/fendo.2015.00180
J Neuroscience
巻: 35 ページ: 12248-12260
10.1523/JNEUROSCI.1345-14.2015
Interdisciplinary Information Sciences
巻: 21 ページ: 283-288
10.4036/iis.2015.B.14
ttp://www.biochem.tohoku.ac.jp//bunsi/index-j.html