研究課題
1.ニューロン特異的OXTR遺伝子欠損マウス解析:縫線核5-HT特異的OXTR発現神経の機能解析は理化学研究所の若菜博士の協力を得る方向で協議中である。社会記憶と母性行動に関与するOXTR発現性神経解析では、内側中核領域のOXTR発現性GABA作動性神経と、扁桃体内側核のOXTR発現性グルタミン酸作動性神経が協調的に働いて社会記憶を形成している可能性が強く示唆されるなど大きく前進した。(西森)2.妊娠齧歯類モデルへのOXT長期投与と産子・母親への副次効果について:引き続き産仔への外来性OXT投与の副作用について調べ、OXT過剰投与群で子宮筋の過剰収縮が原因と推定される脳内虚血と細胞死を確認した。(東大 山末准教授と西森)。陣痛促進剤としてヒト妊婦へOXTを投与したケースの出生後の子供への影響について:引き続き、環境省エコチル研究結果より、母子の健康状態とOXT投与との関係に関するdata解析を継続した。(大阪大学、木村 正教授)3.抗骨粗鬆薬としてのOXT・受容体系が持つ可能性より、OXT・OXTR遺伝子欠損マウスモデルの産褥期骨代謝の測定:所属研究科の移転に伴い、本課題へのOXTR(-/-)マウスの供給が十分でなく、繁殖を待ち再開する。4.OXTR遺伝子KO平原ハタネズミの開発:高度社会性平原ハタネズミでのCRISPR/Cas9による遺伝子操作技術開発と、OXTR(-/-)平原ハタネズミ開発計画は大きく前進し、OXTRヘテロ型遺伝子欠損平原ハタネズミを樹立した。(西森)5.OXTRアゴニストのスクリーニング系樹立と新規OXTRアゴニスト開発:昨年立ち上げたOXTRアゴニスト検索用アッセイにて、東北大薬学部所有の化合物ライブラリーに対し検索を行ったが有力化合物は得られていない。創薬機構より約10000種弱の化合物コアライブラリーを入手、検索準備中である。(青木教授と西森)
2: おおむね順調に進展している
1.神経特異的OXTR遺伝子欠損マウス解析:縫線核5-HT特異的OXTR発現神経の機能解析については、社会性に関与する可能性が少ないと判断された。社会記憶形成に関し、内側中核領域のOXTR発現性GABA作動性神経と扁桃体内側核のOXTR発現性グルタミン酸作動性神経が協調的に働いている可能性が新たに見出され、社会記憶形成の脳内メカニズム解明に向け大きく前進した。また連続2光子トモグラフによる3D網羅的神経回路解析は実施の目処が付き、28年度はその為の既存ツール(AAV-FLEX-SARE-Td.Tomato)の整備と新規ツール(c-fos-Td.Tomato KIマウス)の新規作製を開始、当該方法の完成・実施は真近い。2.妊娠齧歯類モデルへのOXT長期投与と産子・母親への副次効果、及びヒト妊婦へのOXT投与が与える出生後の子供への影響解析については進展は当初の予想よりもやや遅れている。3.抗骨粗鬆薬としてのOXT・受容体系が持つ可能性に関しての、OXT・OXTR遺伝子欠損マウスモデルの産褥期骨代謝の測定は所属研究科の移転に伴い、本課題へのOXTR(-/-)マウスの供給が充たされず繁殖を待って再開予定である。4.OXTR遺伝子KO平原ハタネズミの開発:高度社会性平原ハタネズミでのCRISPR/Cas9による遺伝子操作技術開発とOXTRKOハタネズミ開発計画は大きく前進し、世界的に未だ報告の無いOXTR KOハタネズミ、及びバソプレッシンV1aR KOハタネズミ取得を達成した。5.OXTRアゴニストの検索系樹立と新規OXTRアゴニストに関して、検索用アッセイ系が樹立され、東北大薬学部所有の化合物ライブラリーに対する大規模検索を行った。生憎、有力化合物は見出せなかった。引き続き創薬機構より約10000種弱の化合物コアライブラリーを入手し検索の継続・拡大へ順調に推移している。
縫線核セロトニンニューロンで発現するオキシトシン受容体機能解析は、これまでに新しい機能示唆が無かったため中断し、新たにOXTR-cDNA.HA-IRES-Creマウス作製に際して見出された海馬CA3領域での高いOXTR発現と、同じく、自閉症の執着性や反復行動との関係が示唆される前頭前野領域でのオキシトシン受容体の果たす役割について解析を開始、進める。神経回路の解析は、当初、OXTR.cDNA.HA-IRES-Creマウスを用い、最近導入したFLEX型AAV-DtA(ジフテリア毒素)ベクターによる当該領域のOXTRニューロン除去によりる行動障害の解析を行い、この領域のOXTR発現性ニューロンの機能を明らかにする。昨年の報告書で触れた、2光子顕微鏡を色素標識した連続脳スライス切片に適用する新規方法(Cell Rep 10, 292, 2015)につきPenn州立大学のDr.Kimと共同研究を進め、OXTR-Venus knockinマウスで3D解析画像が得られる事を確認した。この計画に適用するため、新たに c-fos-Td.Tomatoノックインマウスの作製を開始、完成次第社会的摂食や母性行動時のOXTR発現性活性化神経の全脳的解析を進めて行く。エコチルdata解析と骨粗鬆症とOTR・受容体系の関連については継続的に解析と研究を進めていく計画である。新たに、妊娠期の平原ハタネズミ(野性型、及びOXTR(-/-))にOXTを過剰投与した場合の産仔の行動や脳の解剖学的異常の有無について、平原ハタネズミの数が確保され次第解析を開始する。平原ハタネズミの遺伝子改変についてはこれまでに完成したOXTR(+/-)、V1aR(-/+)よりホモ欠損平原ハタネズミを作製して、ペア形成行動や共感性行動への影響を調べていく計画である。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
Neuropsychopharmacology
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http://www.biochem.tohoku.ac.jp//bunsi/index-j.html