研究課題
食品因子の機能性発現には、その因子を分子認識し作用を伝達する食品因子感知機構(食品因子センシング)が重要な役割を果たしている。生体機能分子としてタンパク質に翻訳されないRNA(機能性RNA)が注目されているが、食品因子の機能性発現における関与は不明である。本研究課題では、食品因子により発現調節を受ける機能性RNAならびに機能性RNAにより調節される食品因子センシングを明らかにすることにより、「食品因子の生体内感知・機能性発現における機能性RNAの役割」を解明することを目的としている。本年度は食品因子の機能性発現における血漿マイクロRNAの役割を探るため、緑茶カテキンEGCGを含む代表的な4種類の機能性食品因子を摂取させたマウス血漿中のマイクロRNAの発現量をマイクロアレイ(3D Geneアレイ)を用いて解析した。その結果、それぞれの機能性食品因子によってのみ発現量が変動するマイクロRNAが存在することを明らかにした。食品因子によるマイクロRNA発現調節メカニズムを明らかにするため、センシング機構の研究が進んでいるEGCGのマイクロRNA発現調節作用とそのセンシング機構との関係を検討した。その結果、EGCGはマウスメラノーマ細胞株において、EGCG受容体である67LRに依存的なPP2Aの活性化を介してマイクロRNAの発現を制御していることを明らかにした。また、67LR依存的に発現制御を受けるマイクロRNAとEGCG摂取により発現量が変動する血漿中マイクロRNAには一致するものがあった。
2: おおむね順調に進展している
下記の通り、各検討項目において順調に成果を示したことから概ね順調に進展していると判断した。1)機能性食品因子ごとに特徴的に発現制御を受ける血漿マイクロRNAが存在することを明らかにした。2)緑茶カテキンEGCGのマイクロRNA発現調節作用とそのセンシング機構との関係を検討し、EGCGはその受容体である67LRに依存的なPP2Aの活性化を介してマイクロRNAの発現を制御していることを明らかにした。つまり、機能性食品因子のマイクロRNAの発現制御がそのセンシング機構に依存している可能性を示した。3)機能性食品因子の標的細胞におけるマイクロRNAの発現制御と血漿マイクロRNAの発現制御がリンクしている可能性を示した。
28年度は本年度の成果も踏まえ、下記の項目について研究を推進する。食品因子の機能性発現における血漿マイクロRNAの役割とその発現調節について、食品因子としての植物ポリフェノールが発現を調節するマイクロRNAとその食品因子の機能性におけるそれらの役割について検討する。また、食品因子によるポリアデニル化マイクロRNAの発現誘導メカニズムとその意義に関して、ポリアデニル化を受ける機能性RNAを明らかにするとともに食品因子の機能性におけるそれらの役割ならびにその発現調節機構を検討する。一方、食品因子としての外来性マイクロRNAの同定とその機能に関する検討項目について、緑茶抽出物中に含まれるマイクロRNAの同定を行うとともにその生理活性を明らかにする。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 6件) 学会発表 (74件) (うち国際学会 17件) 図書 (5件)
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