研究課題
食品因子の機能性発現には、その因子を分子認識し作用を伝達する食品因子感知機構(食品因子センシング)が重要な役割を果たしている。生体機能分子としてタンパク質に翻訳されないRNA(機能性RNA)が注目されているが、食品因子の機能性発現における関与は不明である。本研究課題では、食品因子により発現調節を受ける機能性RNAならびに機能性RNAにより調節される食品因子センシングを明らかにすることにより、「食品因子の生体内感知・機能性発現における機能性RNAの役割」を解明することを目的としている。本年度は、表現型ベースの遺伝子スクリーニンングの結果、デルフィニジンの機能性発現に関与すると推定された7種類の候補遺伝子の機能解析を行い、機能性に関する報告例に乏しい分泌タンパク質の一種がデルフィニジンのマイクロRNA発現調節作用に関与していることを見出した。マクロファージは炎症を促進するM1型と炎症を抑制するM2型の2種類に大別され、微小環境に応じた可逆的な極性変化が炎症応答に重要な役割を担っている。緑茶カテキンの一種であるEGCGの摂取はマクロファージの極性をM2型へ分極させることを見出した。また、EGCGはLet-7bを介してマクロファージの極性を調節することを明らかにした。。大豆イソフラボンのポリアデニル化機能性RNAの発現誘導作用に関与する分子として見出したPAPD5がダイゼインならびにその腸内細菌代謝物であるエクオールによって活性化されるがゲニステインにはそうした活性がないことを明らかにした。また、ポリフェノールの一種であるケルセチンにもPAPD5活性化能があることを見出した。
2: おおむね順調に進展している
下記の通り、各検討項目において順調に成果を示したことから概ね順調に進展していると判断した。1)デルフィニジンのマイクロRNA発現調節に関与する分子を明らかにした。2)EGCGがマイクロRNAの一種であるLet-7bを介してマクロファージの極性を調節することを明らかにした。3)大豆イソフラボンの機能性RNA発現調節作用にPAPD5が関与していること、その作用にはポリフェノール特異性があることを明らかにした。
30年度は本年度の成果も踏まえ、下記の研究を推進する。デルフィニジンのマイクロRNA発現調節に関与する分子がどのようにしてその作用を発揮するのか、その分子メカニズムを検討する。大豆イソフラボンのポリアデニル化機能性RNAの発現誘導作用に関与するPAPD5の機能解析ならびに大豆イソフラボンやケルセチンの機能性発現との関係を引き続き検討する。緑茶カテキンを作用させた細胞から放出されるエクソソーム中のマイクロRNAならびにその機能性について検討する。緑茶葉抽出物中に含まれるマイクロRNAの機能性について検討する。
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