研究課題/領域番号 |
15H02450
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
福田 健二 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (30208954)
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研究分担者 |
寺田 康彦 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (20400640)
矢崎 健一 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (30353890)
三木 直子 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (30379721)
内海 泰弘 九州大学, 農学研究院, 准教授 (50346839)
種子田 春彦 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (90403112)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | MRI / 通水阻害 / 木部構造 / X線CT / エンボリズム / 再充填 / 乾燥ストレス / 凍結融解 |
研究実績の概要 |
野外のケヤキ成木に設置した大型の樹木用MRIを用いて、q-space imaging法より、2017年8月および10月について、木部および師部の流速分布の日中変化を可視化することに成功した。この結果、年輪および年輪内の木部形成時期の違いによる流速の違いを定量的に評価することができた。また、コンパクトMRIによる苗木の樹液流速可視化については、ケヤキとシラカンバについて樹液流速の日中変化を可視化する技術が確立された。これを用いて、ケヤキ苗の枝からの蒸散と主幹の樹液流速との関係を解析するとともに、乾燥ストレスによる樹液流速の低下と再灌水による回復過程から、エンボリズムと再充填と思われる現象を可視化することができた。また、コンパクトMRIによる水分布画像を他樹種に適用するため、20樹種を用いて木部の組織構造とMRIの信号強度との関係を明らかにした。マイクロフォーカスX線CTを用いた枝片の観察から、乾燥過程でのキャパシタンスの低下過程では、モミでは晩材仮道管からの脱水が、カツラ、コナラでは道管からの脱水が起きていることが明らかにされた。落葉樹の木部通水の回復性について、どのような生理特性、木部特性が影響するのかを明らかにするため、6樹種の回復性と生理特性を解析した結果、可溶性糖の生産や輸送に関わる特性が影響を与えることが示唆された。 野外でのトドマツ被圧木の解剖観察結果から、光合成が抑制された環境下では年輪欠損に加えて頂端分裂組織の壊死が生じ、肥大成長阻害に先んじて伸長生長の停止が起きていることが明らかにされた。 冬季の乾燥および凍結融解によるストレスについて、縞枯山での調査により葉への傷によってクチクラ蒸散が高まり、枝のエンボリズムが生じていること、冬季の通水阻害と春季の回復は、壁孔の閉鎖、エンボリズムの発生、再充填の順で生じていることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ほとんどの研究課題は順調に進展したが、2017年度夏季のコンパクトMRIを用いた樹液流速測定については、小石川樹木園のガラス室に設置したMRIに、外部の送電線由来と思われるノイズが多く発生したため、十分なデータが得られなかった。そのため、2018年度にMRIの設置場所を実験室内に変更し、再実験を行った結果、樹液流速の可視化に成功した。以上のことから、「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
2017-18年度の実験によりMRIによる樹液流速可視化手法が確立され、さらに多樹種の木部構造とMRI画像との関係も明らかにできたことから、最終年度である2019年度には、針葉樹、散孔材、環孔材のそれぞれ複数樹種について、樹液流速の可視化を行い、材構造と樹液流速分布の関係を明らかにする予定である。2018年度には、通水阻害と再充填の過程がはじめて観測できたことから、この現象の追試を行うことも予定している。 これまでの結果から、環境条件と通水組織の発達の関係、木材構造や生理特性と通水阻害からの回復性の関係が一定程度明らかになってきたことから、それらの結果とMRIによる結果とを総合して、通水に関わる樹種特性について総合的な理解を得ることを目指す。
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