研究課題
広葉樹のハリエンジュ分化中木部を用いて形成中の木部繊維細胞壁形成過程を調べた。高分解能走査電子顕微鏡で形成中の細胞壁内表面を観察すると、細胞壁最内表面には配向がやや乱れた幅4nm程度のフィブリルが存在し、そのすぐ外側には極めて整然と配向した幅15nm程度のフィブリルが存在した。PATAg法で多糖類を選択的に染色すると、前者のフィブリルはよく染色されるのに対し、後者のフィブリルは染色されなかった。同じ分化中木部を脱リグニン処理した後にPATAg法で染色すると、幅15nm程度のフィブリルの染色性は向上した。このことから、細胞内で合成されたキシランは細胞壁内表面に分泌された後、直ちに堆積直後のミクロフィブリル周囲を覆うように堆積すると思われる。続いて、ミクロフィブリルは数本が集合して幅15nm程度のやや太いフィブリルを形成し、その周囲をリグニンが薄く覆うものと考えられる。広葉樹のポプラ分化中木部をホモジナイズし、超遠心法によりミクロソーム膜画分を得た。さらに不連続ショ糖密度勾配法により4つの画分に分け、プロテオーム解析してコニフェリ輸送活性の高い画分に特異的に発現するタンパク質を選抜した。さらに複数回の膜貫通ドメインを持つものを絞り込み、最終的に5つ選抜した。これら選抜した膜タンパク質の機能は、次年度以降の研究課題である。モウソウチクを4月と8月に採取し、ホモジナイズした後に超遠心法でミクロソーム膜画分を得た。この画分に8種類のリグニン前駆物質を用いて輸送実験をしたところ、4月の試料でATP依存的なコニフェリンとp-グルコクマリルアルコールの輸送活性が見られた。一方、8月の試料では輸送活性が認められなかった。さらに4月の試料を用いて輸送阻害実験を行ったところ、V-ATPaseとH+勾配がコニフェリンとp-グルコクマリルアルコールの輸送に関与していることが示唆された。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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Scientific Reports
巻: 9 ページ: 1-10
doi.org/10.1038/s41598-019-45394-7