研究課題
平成29年度までの調査で、生物、物理場ともに十分な情報が得られており、最終年度である今年は、球磨川河口域については秋季のみの野外調査とした。近年最大の出水が発生した後に調査を実施したこと、その出水時に上流側の瀬戸石ダムで初めてスルーシングが実施されたこともあり、例年よりも多くの土砂が干潟に到達したと予想され、実際に底質が砂質に変化した地点が多数認められた。2011年から2018年までのベントス調査について出現した生物を整理したところ、74種の魚類(そのうち、40種はハゼ類)、67種の甲殻類(そのうち、40種はカニ類)、63種の貝類(そのうち、31種は二枚貝類)が確認され、それ以外の分類群を含めると約200種が記録された。水産有用資源が多く認められる二枚貝類に着目し、出現頻度を変数として、群集解析を実施したところ、概ね、3タイプの群集(オキシジミ型、ハマグリ型、マテガイ型)に分けられた。また、調査年月については3タイプ(攪乱直後、安定期、極相期)に分けられた。そして、オキシジミ型は、攪乱後から徐々に出現頻度を増し、極相期に最大になること、ハマグリ型は攪乱直後に増加をはじめ、安定期に最大となり、極相期に減少することが明らかとなった。また、マテガイ型は攪乱直後に最大値を示す生物遷移のフロンティア種であると推察された。このように、干潟の生物相は、出水等に伴う土砂供給が起点となる自然攪乱をスタートとする生物遷移を見せること、その中に水産有用資源が含まれることを、本課題は明示しており、漁場再生をはじめとする干潟の保全と整備において、単なる基盤の維持ではなく、攪乱を加味した時空間レベルでのマネジメントが必要であることが明確となった。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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