研究課題/領域番号 |
15H02459
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松山 倫也 九州大学, 農学研究院, 教授 (00183955)
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研究分担者 |
長野 直樹 九州大学, 農学研究院, 准教授 (50437943)
坂口 圭史 九州大学, 農学研究院, 講師 (50396280)
北野 載 九州大学, 農学研究院, 助教 (30635008)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ゲノム編集 / TALEN / CRISPR/Cas9 / マサバ / 受精卵 |
研究実績の概要 |
TALENやCRISPR/Cas9を利用した「ゲノム編集」技術は,ごく近年開発された遺伝子改変の基盤技術である。本技術は,今後のアグリイノベーション分野における革新的な育種手法として期待されている。現在,魚類を対象にした研究は小型モデル種(メダカ,ゼブラフィッシュ)のみである。本研究では,完全養殖系を有するマサバを材料として,ゲノム編集技術による遺伝子ノックアウト(KO)を用いた海産魚における育種基盤技術を開発する。平成27年度は以下の成果を挙げた。 魚類でゲノム編集を行うには、受精直後の受精卵を得る必要があるが、マサバの通常の産卵期は5月を中心とするほぼ1ケ月間である。環境(水温、日長)調節することにより、産卵期を前倒しし、冬季に受精卵を得られる飼育系を開発した。すなわち、マサバ親魚を前年12月より長日(14L:10D)、恒温(19℃)で飼育することにより、2月中旬に雌の卵黄形成および雄の排精が完了し、それら親魚に最終成熟を促進するGnRHaを投与することにより、翌々日から産卵が始まり、10日程度の連日にわたる産卵が確認された。飼育水槽の昼夜を逆転することにより、受精直後の受精卵が日中に得られ、実験の効率が格段に上昇した。飼育水槽を複数用意し、時期をずらしてGnRHaを投与することにより、2~4月にかけての受精卵の入手が可能となる実験系が整備された。 次に、上記で得られた受精卵を用い、マイクロインジェクション手法の適正化を図った。その結果、マサバ受精卵では、カタクチイワシ受精卵で用いられた卵黄への注入は有効でなく、針先を直径1μmに研磨作製したガラス針を胚盤に直接インジェクションすることで、注入した色素を達成できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マサバの産卵直後の受精卵を通常産卵期(4~5月)に加え、冬季(2~3月)に確実に取得する手法を開発できた。また、マイクロインジェクション手法の最適化も順調に進展しており、対照区に比べ80%以上の生残率を達成できるようになった。さらにマサバGnRH1遺伝子のコアペプチドコード領域を切断するためのCRISPR/Cas9のgRNAを4種類設計した。マイクロインジェクション手法の最適化を図るために時間を要したため、実際に受精卵を用いたKO実験は実施できなかったが、全体として年次計画は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
マサバのGnRH1遺伝子およびレプチン受容体(LepR)遺伝子のKO個体作出を目指した実験を実施する。4月の通常産卵期から実験に入る。4、5月でGnRH1およびLepR遺伝子のCRISPR/Cas9によるKOを行い、孵化後1日胚を用いてHMA法で変異導入効率を評価する。さらに、昨年度開発した冬季産卵誘導技術を使って、1月からの採卵を行い、1~3月にかけて得られた受精卵を用いてGnRH1およびLepR遺伝子の破壊実験を行い、FOの育成を始める。
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