研究課題/領域番号 |
15H02461
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
浅川 修一 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (30231872)
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研究分担者 |
大政 健史 大阪大学, 工学研究科, 教授 (00252586)
近藤 秀裕 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (20314635)
田角 聡志 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任助教 (90359646)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | サメ抗体 / 一本鎖抗体 / IgNAR / 抗体医薬 / モノクローナル抗体 / CHO細胞 / 抗体工学 / トランスクリプトーム |
研究実績の概要 |
平成28年度は平成26年夏から飼育を開始し、5ヶ月間、経時的に抗原接種と採血を行った5匹のイヌザメのIgNAR遺伝子のトランスクリプトーム解析を行った。トランスクリプトームの解析対象部分はIgNAR遺伝子の可変領域である。その部分を特異的に増幅するPCRプライマーを設計した。5匹のサメから各5回採血し、それらの末血から調整したcDNAを元に可変領域を増幅しアンプリコンシーケンシングを行った。シーケンシングにはMISEQを使い両エンドから300塩基のデータを得た。増幅した可変領域は500~550塩基程度であるため、両エンドからのシーケンスを結合すれば、可変領域を完全にカバーする可変領域のcDNA配列を得ることができる。その結果、それぞれのサンプルから20~40万の完全長IgNAR可変領域のデータを得ることができた。これらによって得られた配列を解析した結果、5種類のサメで得られた配列、その長さの分布、各配列の出現頻度をデータベース化できた。特に本研究にとって重要である、それぞれの配列が抗原接種に伴ってどのように変化するか、という点についてデータを得られたことは大きな成果である。 これらに加えて、採血した血液から血清を回収し、抗原特異的なIgNARを検出するためのELISA系を確立した。その結果、それぞれのサメで、最初に抗原を接種してから3、4ヶ月で抗原特異的に抗体量が増加していることが検証できた。 さらにドチザメIgNAR重鎖保存領域をコードする大腸菌組換えタンパク質を調製し、得られた組換えタンパク質に対するウサギポリクローナル抗体を作製した。 得られた抗体を用いたWestern Blottingによりドチザメ血清中のIgNARを検出できた。 また、宿主細胞としてCHO細胞を用いたサメ抗体(IgNAR抗体)の分泌生産系を構築することを目的として,IgNAR抗体の定常領域を変化させた抗体フォーマットを作成し,CHO細胞における抗体分泌能を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前述のようにイヌザメを対象に、可変領域配列が異なるそれぞれのIgNAR遺伝子の発現量を観測する実験系を確立した。そして実際に抗原接種前、および接種後5ヶ月に渡って、5匹のイヌザメから採血し、それぞれの採血サンプルから個々のIgNAR遺伝子の発現量がどのように変動したかについて、データが得られた。またそれぞれの血液中の抗原特異的IgNAR量を観測するためのELISA系を確立できた。一方、トラフグについては飼育の容易さは個体に大きく依存するが、最初のトライアルは飼育上の問題で中断している。現在飼育条件を検討中である。またヤツメウナギは個体サイズが小さく、生かしたままの経時的採血が難しかったため、実験は抗原接種前の採血までに止めた。 本研究においてサメのIgNARは立案当初から本研究の最大の研究対象である。サメで得られた結果は、本研究が意図するトランプクリプトームによる発現変動と抗原特異的な抗体の血清中での量的変動を照合して、抗原特異的な抗体遺伝子を同定するプロセスの根幹をなすものであり、本研究は極めて順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
現在、最初のイヌザメグループが死去したため、現在第2グループのイヌザメを飼育し、抗原の接種を続けている。これまでに5回の抗原を接種しており、採血も完了している。29年度はこれらのサンプルの解析を進めるのと共に、抗原接種に応じて発現量が変化した遺伝子を選別し、CHO細胞で発現させる。発現させたサメIgNAR抗体と抗原との結合性を検証し、最終的に本研究の目的を達成させたい。
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