研究課題/領域番号 |
15H02467
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西村 拓 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (40237730)
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研究分担者 |
溝口 勝 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (00181917)
飯田 俊彰 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (30193139)
大澤 和敏 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (30376941)
塩澤 昌 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (80134154)
登尾 浩助 明治大学, 農学部, 専任教授 (60311544)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | セシウム / 河川 / ため池 / 農地 / 有機物 / 粘土鉱物 / 侵食 |
研究実績の概要 |
水食予測モデルを活用したCs再分布予測については、日本国内にWEPPならびにその広域版GeoWEPPを適用するための、入力気象データ自動生成プログラムをUSDA-ARSのCLIGENを活用して構築した。アメダスの過去のデータを用いて、入力気象データの作成を試み、降水量については、既存の頻度分布と同程度のデータを生成可能であることを確認した。 流水系におけるモニタリングでは、飯舘村K地区の小流域および比曽川、真野川におけるモニタリングを継続し、データを蓄積した。特に小流域では、流出する放射性セシウム量が降水量や流量、濁度と低い相関を示す特異な結果を得た。これは、いわゆるセシウムボールに類似した小粒子含まれるセシウムの影響が大きいことが示唆された。 水域に堆積するセシウムの動態については、福島県南相馬郡のU川に沿って調査を行い、河川敷内に限定した放射性セシウムの再分布が生じているという傾向を得た。また、ダムがある場合、ダムを境としてダム上流部に沈着したCsはダムに集積し、下流側に沈着したセシウムは下流域の中で再分布していくことが示唆された。 水域におけるセシウムの流出や屋敷林などにおける放射性セシウムの深さ分布から、水中、土壌中の有機物がセシウムの保持、移動に少なからぬ影響を与えていることが示唆された。そこで、現有の元素分析計や溶存炭素計、FTIR等を用いて、有機物の解析をおこなった。また、それに基づいて、土壌中の放射性セシウム再分布を検討する室内カラム実験の実験系を設計した。 6月から8月にかけて、NSFとJSPSの協働企画であるサマープログラムで米国ニューヨーク州立大学バッファロー校の博士院生を受け入れ、福島における現地調査、聞き取り調査ならびに院生の指導教員も含めてGeoWEPPの適用に関する議論を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H27年度は進捗の遅れが目立ったが、GeoWEPP開発者ならびに開発に関連する院生との議論などを通じて、かなり遅れを取り戻したと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度であることを念頭に、シミュレーションを重要なテーマとして取り組む。特に、5月に、前年、縁があって議論を開始したニューヨーク州立大学のChris Renschler教授(GeoWEPP開発者)を招聘して、集中的にGeoWEPPの適用について検討を進める。また、WEPPの開発元であるUSDA-ARS土壌侵食研究所リーダーChi-Hua Huang 博士との議論も継続し、大スケールのGeoWEPP、中・小スケールのWEPPの使い分け等について、整理しながら研究を進める。 細かいメカニズムについては、溶存有機物の寄与や、セシウムボールと疑われる小粒子の検討を進めたいと考えている。 また、5月には地球惑星連合大会、9月には農業農村工学会で、本プロジェクトに関連するセッションを企画運営し、議論の深化ならびに成果の広報に努める。
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