研究課題/領域番号 |
15H02469
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中西 友子 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任教授 (30124275)
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研究分担者 |
二瓶 直登 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任准教授 (50504065)
岩田 錬 東北大学, サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター, 名誉教授 (60143038)
山岸 順子 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (60191219)
廣瀬 農 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任講師 (90708372)
杉田 亮平 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (60724747)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | RIライブイメージング / ベータ線 / 植物栄養 |
研究実績の概要 |
わたしたちの研究グループが開発してきた放射線RIイメージングシステム(RRIS)は、シンチレータを用いて放射線を光に変換し、その光を高感度CCDカメラで検出することで撮像可能である。撮影の視野範囲はシンチレータの大きさに依存する。これまで用いてきた板状シンチレータであるFOS(10x10㎝)を2枚並列に設置し、20x10㎝の視野範囲を撮影してきた。解析の対象としてきたイネやダイズなどは個体が小さい幼少期を用いてきたが、農業として重要となる収穫ステージは1メートル程度まで生長するため、解析を行うことができなかった。そこで視野範囲の拡大を目的とした新規シンチレータの探索を行った。様々なシンチレータの性能を評価し、最適なシンチレータの開発を行った。その結果、撮影範囲は80x60㎝に広がった。撮影には、植物から放出される自家蛍光を遮光する必要があり、自家蛍光を遮光しつつ、植物から放出される放射線が極力透過できる遮蔽材の検討を行った。その結果、2マイクロメートル厚のアルミマイラーを最適であり、自家蛍光を完全に遮光することに成功した。新しく開発した大型シンチレータを用いた撮影手法を用いて収穫時期である大型のダイズを用いて、光合成産物がどこで行われ、どこへ輸送されるのかを細かく解析した。その結果、光合成能はそれぞれの葉ごとにはあまり差がない一方で、光合成産物は古い葉は新しい葉へ積極的に輸送させること、果実は最も近い葉から供給されること等がわかってきた。今後はさらに生育ステージを細かくわけ、光合成産物の輸送を追っていくことで、効果的な施肥のタイミングを知るうえで重要となってくると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RRISはこれまでよりも格段に視野範囲が広がり、解析可能とする植物種、および生育ステージが広がった。RIライブイメージングにおいては、世界で最も視野が広く、かつ高解像度である。一方で、植物の設置方法などの課題点などもあり、今後さらに改良していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
RRISによる撮影は、植物試料をシンチレータに固定する必要がある。一方で、葉が湾曲している植物や、球状である果実等の撮影においては、板状であるシンチレータとの接触面積が小さく、解像度や感度が低下する。この問題を解決する方法として、植物試料をいかにシンチレータに接触させるかが重要であり、板状から脱却する必要がある。そこで、次年度は液体状、粉状や薄いシート状など様々な形状のシンチレータを検討する。液体状シンチレータにおいては、様々な有機シンチレータが既に開発されている。ただし、これらは主にアセトンやトルエンを主成分とするものであり、植物にとっては有害である。そこでミセル化することで無毒化を目指す。粉状シンチレータにおいては、加工性、および安定性に優れるプラスチック製シンチレータを粉末状にして用いる算段である。薄膜シート状においては、無機シンチレータの蒸着による作製する方法や、粉状もしくは液体状シンチレータを薄膜上に成型して作成する予定である。これらの様々なシンチレータの性能を評価し、また、植物への設置方法を検討した後に、撮影に適用させることで、新たな撮影手法を開発する。また、今までの成果を纏めてSpringerから本として出版する予定である。
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