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2015 年度 実績報告書

生殖系列における性特異的エピゲノム制御の解明

研究課題

研究課題/領域番号 15H02472
研究機関東京農業大学

研究代表者

河野 友宏  東京農業大学, 応用生物科学部, 教授 (80153485)

研究分担者 小林 久人  東京農業大学, その他部局等, 准教授 (70632727)
外丸 祐介  広島大学, 学内共同利用施設等, 教授 (90309352)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワードトランスクリプトーム / 始原生殖細胞 / ゲノム編集 / 性転換マウス / ChIP-seq / エピゲノム / 性分化
研究実績の概要

研究初年度は、以下の3項目について集中的に研究を進めた。
1)雌雄の始原生殖細胞(PGC)におけるトランスクリプトームデータ取得: 雌雄マウスPGC間の有為に発現が上昇した遺伝子および低下した遺伝子を、それぞれ遺伝子651および428特定した。それらの多くは転写因子であった。遺伝子オントロジーおよびネットワーク解析は、生殖細胞への分化に必要な性固有の機能を明らかにし、差次的発現を示した遺伝子がPGCの性分化を調節していることを明らかにした。また、DNAメチル化およびヒストン修飾のChIP-seq解析は、低メチル化遺伝子のプロモーター領域が、H3K4me3修飾を受けていることを明らかにした。さらに、単一細胞のトランスクリプトームデータの取得に成功し、PGC細胞の不均一性を明らかにした。
2)ゲノム編集によるSry-KO XY雌マウスの作出: ゲノム編集によるSry-KO XY雌の性転換雌を効率的(10-20%)に作出することに成功した。性転換個体は正常な雌の形態を呈していたが、交配試験の結果不妊であることが判明した。成体の性転換マウスの病理組織解析の結果、卵巣内卵子の消失が確認された。
3)少数細胞を用いたChIP-Seqによる包括的ヒストン修飾解析手法の確立: ヒストン修飾解析法は、出来る限り少数の細胞を対象とした手法の確立を目指し、10,000 個のES細胞を用いたNative ChIP-Seqを実施し、再現性の高いH3K4me3およびH3K4me1の手法を確立した。これは従来の1/10の細胞数で、網羅的ヒストン修飾情報の取得ができることを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本申請で挙げた研究内容は、いずれも次世代シークエンサーを活用した網羅的な遺伝子解析を実施する計画である。解析対象が始原生殖細胞(PGC)で取り扱いが容易ではなく、かつ使用できる細胞数が限定される。まずOCT4-EGFPマウスを自家繁殖させ、FACSソーターを用いて効率的に始原生殖細胞を純化するシステムを確立して問題を解決し、安定的に十分数の細胞の供給を可能とし、研究が当初目標を上回る進展に結びついた。特にトランスクリプトーム解析の成果は、雌雄生殖細胞の特性を明確に示す遺伝子発現プロファイリングを提示し、さらに、単一細胞のトランスクリプトームデータの取得に初めて成功し、PGC細胞の不均一性を明らかにした。この事実は、今後の雌雄生殖細胞の分化・選別に重要な視点を提供したものと理解している。
また、ゲノム編集による性転換XYマウスの作出は、当初難題と捉えていたが、効率的に作出することに成功した。今後の生殖細胞の性分化機構の解明に重要な進展と理解している。
一方、DNAメチル化では説明できないエピジェネティクス修飾による遺伝子発現制御を理解するため、ヒストン修飾解析法の確立を目指した。細胞数を従来の1/10である10,000個での解析を可能としたことは、PGCを対象とした本研究課題の推進に重要な成果であり、2年度以降の研究に大きく貢献することは間違いない。
初年度の成果は、PLOS ONE誌に掲載され、また学会発表においても優秀発表賞(日本卵子学会、Epigenetics 2015)を授賞している。以上のことから当初計画を上回る成果を挙げたと判断した。

今後の研究の推進方策

さらに生殖系列細胞の特性を明らかにするために、今後はCRISPR/Cas9を用いたゲノム編集によりSry欠損による性転換マウスを作出し、以下の実験を実施する。 1) 包括的ヒストン修飾解析: 我々が構築した少数細胞を対象としたChIP-Seq解析によりE13.5雌雄始原生殖細胞(PGC)の包括的ヒストン修飾解析を実施する。ChIP-Seq解析は、10,000個のPGCを対象とし、Native ChIP-Seqを行う。なお、免疫沈降には修飾ヒストン抗体H3K4me1, H3K4me3, H3K9me3, H3K27me3 およびH3K27acを用いて包括的情報を取得して、その特性を比較解析する。 2) トランスクリプトーム解析: E11.5-E13.5の雌雄PGCおよび支持細胞(前駆卵丘細胞)のトランスクリプトーム解析を実施する。両者の分別回収が必ずしも容易でないことから、Fluidigm社IFC chip および C1 Single-Cell Auto Prep System method を用いたシングルセルトランスクリプトーム解析を実施する。トランスクリプトームデータのクラスタリング解析からXX雌PGC、XY雌PGCおよび両者の支持細胞を特定し、これによりXY-雌卵丘細胞のトランスクリプトーム特性を把握し、卵母細胞への分化との関連を探る。 3) 3Dイメージング解析: XY雌、XX雌およびXY雌生殖巣におけるPGCおよび支持細胞の3Dイメージング解析を実施して細胞配置を明らかにする。生殖巣はホールマウント免疫染色した後、Carl Zeiss共焦点レーザー顕微鏡を用いて画像情報を取得し3D構築する。これにより雌生殖系列細胞の分化に必要な生殖巣における細胞配置について検証する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2015

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Sex Specification and Heterogeneity of Primordial Germ Cells in Mice2015

    • 著者名/発表者名
      Akihiko Sakashita, Yukiko Kawabata, Yuko Jincho, Shiun Tajima, Soichiro Kumamoto, Hisato Kobayashi, Yasuhisa Matsui, Tomohiro Kono
    • 雑誌名

      PLOS ONE

      巻: 10(12) e0144836 ページ: 1-21

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0144836

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Regulation of Gender Specific Gene Expression in mouse Primordial Germ Cells2015

    • 著者名/発表者名
      Akihiko Sakashita, Yukiko Kawabata, Yuko Jincho, Shiun Tajima, Souichiro Kumamoto, Hisato Kobayashi, Yasuhisa Matsui, Tomohiro Kono
    • 学会等名
      Epigenetics 2015
    • 発表場所
      Tasmania, Australia
    • 年月日
      2015-11-11 – 2015-11-14
    • 国際学会
  • [学会発表] マウス始原生殖細胞の遺伝子発現を制御するエピゲノム修飾2015

    • 著者名/発表者名
      神長祐子, 川畑順子, 坂下陽彦, 小林久人、河野友宏
    • 学会等名
      日本繁殖生物学会
    • 発表場所
      宮崎大学
    • 年月日
      2015-10-17 – 2015-10-19
  • [学会発表] マウス始原生殖細胞におけるDNAメチル化非依存的な性特異的遺伝子発現機構2015

    • 著者名/発表者名
      坂下 陽彦, 田島 紫雲, 川畑 順子, 神長 裕子, 小林 久人, 河野 友宏
    • 学会等名
      日本卵子学会
    • 発表場所
      宇都宮
    • 年月日
      2015-05-30 – 2015-05-31

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公開日: 2017-01-06  

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