研究課題/領域番号 |
15H02478
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
田中 あかね 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (80418673)
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研究分担者 |
古市 達哉 岩手大学, 農学部, 教授 (30392103)
種田 久美子 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 研究員 (40750469)
永岡 謙太郎 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (60376564)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 診断・検査 / 肥満細胞腫 |
研究実績の概要 |
獣医臨床において厄介な悪性腫瘍であり続けた肥満細胞腫に対する理解は、この10年で大きく変化した。分子生物学的解析によりイヌに特徴的なKIT受容体の遺伝子変異が解析され、イヌ用の分子標的治療薬が開発された。しかし肥満細胞腫に対する分子標的治療薬適用の適切性を判断する基準は未だ不十分で、臨床獣医師が最適な治療法を選択する根拠を提供できていない。本研究では、KIT遺伝子解析に依らないKIT依存性・非依存性腫瘍の分別法、薬剤応答性や副作用の発現リスクを見極める方法、及び循環がん細胞検出法を確立、新時代の獣医腫瘍学における最適な治療法の選択に根拠を与えるために必須となるコンパニオン診断の構築を目的とする。平成27年度は肥満細胞腫への投与が想定される化学療法剤の中でも、特に使用頻度が増えている分子標的治療薬及び高頻度に使用されるグルココルチコイドに関して、獣医師が根拠を持って投与できるコンパニオン診断法確立のための基礎研究を遂行した。代表者らが維持しているイヌ肥満細胞腫由来細胞株を用いてグルココルチコイド感受性を調べたところ、感受性にばらつきがあることがわかった。そこで細胞質内に存在するグルココルチコイド受容体(GR)の発現動態を調べたところ、GRの発現量とグルココルチコイド感受性には相関が認められた。GRの遺伝子解析により変異が認められないこと、薬剤耐性遺伝子MDR1の発現に差がないことから、GRの発現強度が犬肥満細胞種細胞のグルココルチコイド感受性を決めている可能性が明らかとなった。また、肥満細胞種に使用されるリン酸化KITのチロシンキナーゼ阻害剤について、KITにどのような構造的変化を起こしているのかを調べたところ、KITの二量体化を阻害せず、無機能性の二量体画像化することがわかった。さらに、循環がん細胞の検出を目指したフローサイトメトリー法の条件設定を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度に計画していたグルココルチコイドやチロシンキナーゼ阻害剤の肥満細胞に与える作用を分子生物学的手法で順調に解析を進めている。また次年度以降の研究の進捗に必要となる基礎的なデータの収集や条件設定なども予定通り実施できている。
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今後の研究の推進方策 |
化学療法剤選択指標については、臨床現場で実施可能な針生検サンプルからの検出系を模擬し、担がんマウスからの生検サンプルを用いて検出系を作るための、基礎的な研究を進める。とくに、KIT受容体の自己リン酸化の検出、細胞外及び膜近傍ドメインの変異の存在を示すKIT二量体化の評価、機能的GR発現の検出、解糖系亢進の評価、小胞体ストレス応答性の検出に焦点を絞りコンパニオン診断に繋がる基礎研究を実施する。また、薬物の有効性や副作用の発現予測について、分子標的治療薬への薬物感受性の低下は、新たな遺伝子変異の追加や一塩基多型(SNP)の存在が原因であることが多いことから、初年度に得られた基礎的な情報をもとに、特に我が国で飼育頭数の多い犬種(柴犬、シーズー、ダックスフントなど)を中心に、できる限り多くの臨床症例から末梢血を提供してもらい、GRおよびCYPの遺伝子解析を実施、発現量やSNPの解析データを得る。
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