研究課題
多胚性寄生蜂の他種寄生蜂に対する防御には液性排除因子と兵隊幼虫が使われ、いずれにも性的差異が見られる。液性排除因子については、コマユバチ培養細胞を用いた簡易生物検定法を確立した。また、無タンパク培地で培養した多胚が分泌するタンパク質の質量分析によりタンパク質の同定を行った。さらにこのデータをこれまでに胚子増殖期の雌雄胚子で得られたトランスクリプトーム解析データの情報を合わせて精査した結果、タンパク質分解に関わる酵素が含まれることが明らかとなった。兵隊幼虫については、外敵に対する雌特異的な増員が知られてきた。この現象は、生殖細胞決定因子を持たない胚子が増えることによって不妊の兵隊幼虫が増加することによって起こると考えられてきた。本研究では、培養桑実胚にコマユバチのvenomを処理し、その後の遺伝子発現を調べた結果、生殖細胞決定因子の主要成分の一つであるvasaの遺伝子発現が、生殖細胞の細胞死により、あるいはvasa遺伝子発現そのものの低下により、引き起こされるものであることを明らかにし、論文発表した。兵隊幼虫の進化は、防御のほか、雌雄対抗による進化が想定されている。野外データと実験データを基にした数理学的研究により、多胚性寄生蜂における兵隊幼虫の進化について新規の概念を提案し、論文発表した。多胚性寄生蜂の性的差異は初期胚の段階から現れ、雌に比べ雄のほうが初期の多胚形成が早期にかつ活発におこることが知られている。培養桑実胚では、JHにより多胚形成が促進されることから、この系を利用して、これまでに得られたトランスクリプトーム解析データから多胚形成に関わる遺伝子を精査し、数種の有力候補遺伝子を選定し、論文発表した。本課題を含む多胚性昆虫に関する総説として「Polyembryonic Insects」を上梓した。
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