研究実績の概要 |
本研究では、カビの環境ストレス応答と二次代謝の基礎・応用研究にとって重要な一酸化窒素耐性化と二次代謝系のエピジェネティック制御について研究を行った。特に、遅れていたAspergillus nidulansの一酸化感受性変異株の変異の特定に成功した。具体的には、長期間を要するA. nidulansの交配と子孫の解析、次世代シーケンサーによる目的変異の特定については、国内外で例は少なく新たな貴重な実験系として重要なものとなった。具体的には、交配によって変異株(親株)の変異遺伝子候補を7つに絞り込むことが可能であり、これらの遺伝子破壊等の検証実験を通して、2つの一酸化窒素耐性化遺伝子(rcoAおよびsnaD)を発見することができた。これまでの本研究により、一酸化窒素への耐性化にアミノ酸生合成が寄与することが示されている。両遺伝子のうちsnaD遺伝子破壊株の生育の一酸化窒素感受性が培地にアミノ酸を添加することで回復したことは、snaDが一酸化窒素による細胞内アミノ酸レベルの低下になんらかの機能を持つことを示唆するものであった。また、一酸化窒素の添加による本菌の転写変化を網羅的に解析した。関連する酸化ストレス応答などに既存の研究例と比較し、一酸化窒素は極めて広範な遺伝子発現を変化させることが明らかになった。 サーチュインによるエピジェネティック制御については、昨年までのSirC, SirD, SirEについての研究を継続し、SirCとSirDの組換え酵素の大量生産に成功したことによって、基質特異性の詳細を解析できた。全ての真核生物を通じてもサーチュインアイソザイムの基質特異性の詳細な研究例は少ないことから、本成果は関連研究者に大きなインパクトを与えるものであると考えている。
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