研究実績の概要 |
集積型二重結合であるアレンを基盤とし、Ⅰ. 環歪みを利用しない炭素-炭素結合活性化法の開発, Ⅱ. 新たな反応場による炭素-炭素結合活性化法の開発, Ⅲ. 本活性化法を利用した,生理活性天然物の効率的合成法の開発の3つのテーマ遂行を目処に研究を展開した。 テーマIでは当初、歪みのない炭素-炭素結合活性化を検討していたが、今回ヘテロ原子を含むヘテロシクロブタン-アレン-アルキン体をRh触媒と処理することにより、8員環構造を含むヘテロビシクロ[6.4.0]骨格が形成できることを見出した。本法は環歪みを利用しているが、これまで炭素環上の炭素-炭素結合のみを活性化していた手法が、複素環内の炭素-炭素結合活性化にも適用可能であることを見出したものであり、その意義は大きいと考えている。 またテーマⅠ,IIの遂行を目的に種々検討を行った所、オレフィン-アレン-アルキン体及びベンジルアレン-アルキン体を用いてそれぞれRh触媒と処理すると、[2+2+2]環化付加や新規環化異性化反応が進行することも見出した。これらも結果的には炭素-炭素結合活性化を伴ったものではなかったが、新たな反応形式を提供したものであり、その重要性は高いと確信している。 テーマIIIについては、ヘテロビシクロ[6.4.0], [7.4.0]骨格の構築を基盤とした天然物合成を計画しており、初期計画とは異なるものの、ビスアレン体を用いたRh触媒による環化異性化反応、続くヘテロDiels-Alder反応により、目的とする母核の効率的構築法を見出すに至った(本結果はEur. J. Org. Chem.に投稿し、受理された)。
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