研究実績の概要 |
今年度も遷移金属触媒の持つ特異性を最大限に活用するため、Ⅰ. 環歪みを利用しない炭素-炭素結合活性化法の開発、Ⅱ. 新たな反応場による炭素-炭素結合活性化法の開発、Ⅲ. 本活性化法を利用した,生理活性天然物の効率的合成法の開発の3テーマの遂行を目的に、研究を行った。 テーマI.環歪みを利用しない炭素-炭素結合活性化法の開発では、アルキン-アレン-アルキン体をロジウム触媒と処理したところ、プロパルギル位のC-C結合切断を伴う新規分子内環化反応が進行し、三環性化合物が得られることを見出した。これは、環歪みを全く利用しておらず、従来にない反応性を創出できたものと考えている。現在、化合物データの収集を行っており、今後論文投稿を行っていく予定である。 テーマII.新たな反応場による炭素-炭素結合活性化法の開発では、ベンジルアレン-アルキン体を用いたC-H結合活性化を含む新規環化異性化反応(Angew. Chem. Int. Ed. 2016 , 55, 10473)、アレニン-アルキン体の新規部分的分子内[2+2+2]環化付加反応(Chem. Eur. J. 2016 , 22, 12181)を見出した。 テーマIII.本活性化法を利用した,生理活性天然物の効率的合成法の開発では、分子内Pauson-Khand反応を利用した(+)-Sieboldine Aの全合成に成功した。本合成法は、不活性結合の活性化に基づく合成手法ではないものの、高立体選択的かつ効率的な合成法であったため、Org. Lett.誌( 2017 , 19, 320)にアクセプトされた後、ACS Editors' Choiceに選出されるという高い評価を受けた。 当初計画案とは必ずしも一致しないが、以上のように、立案した3テーマ全てに基づく新たな知見が得られた。
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