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2015 年度 実績報告書

多元的構造生物学アプローチによるプロテアソーム形成機構の解明と創薬への展開

研究課題

研究課題/領域番号 15H02491
研究機関名古屋市立大学

研究代表者

加藤 晃一  名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (20211849)

研究分担者 矢木 真穂  大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設), その他部局等, 助教 (40608999)
山口 拓実  北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 准教授 (60522430)
矢木 宏和  名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 講師 (70565423)
佐藤 匡史  名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (80532100)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2019-03-31
キーワードプロテアソーム / アッセンブリーシャペロン
研究実績の概要

初年度前半は、真核生物のプロテアソームアッセンブリーシャペロンの古細菌ホモログ分子をモデル系として、分子集合の計測手法の方法論を磨き上げた。超分子質量分析により、古細菌ホモログPbaAはホモ5量体を形成しているが、その結合パートナータンパク質PF0014との相互作用することにより10:10のヘテロ20量体を形成することを見出した。さらに、電子顕微鏡解析により本複合体の立体構造を明らかにした。一方、金沢大学との共同研究を通じて、古細菌のアッセンブリーシャペロンホモログPbaBと古細菌プロテアソームの高速原子間力顕微鏡(AFM)解析を行い、分子集合過程のダイナミクスを追跡するための基盤を整えることができた。
次に、ヒトプロテアソームの中核的な構成要素であるαリングをターゲットとしてその形成過程を探査した。αリングはα1~α7の7種類の異なるサブユニットから成るヘテロ7量体であり、アッセンブリーシャペロンPAC1~PAC4がその集合過程に関与している。そこで、これら構成コンポーネントとシャペロンを組換えタンパク質として調製することを試み、全コンポーネントの発現・精製法を確立することに成功した。次に、これらを用いて、超分子質量分析によりサブユニット形成中間体の同定と構造解析を試みた。その結果、α7単独ではホモ14量体の二重リング構造を形成するが、これにα6を加えることによって二重リング構造が解体され、7つのα7と1つのα6からなるヘテロ8量体が形成されることが明らかとなった。すなわち、プロテアソームの形成は、非天然型のサブユニット集合体の生成と、これが他のサブユニットとの相互作用を通じて崩壊するスクラップ・アンド・ビルドの過程を含むことが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

真核生物のプロテアソームは33種類66個ものサブユニットから構成されており、その形成はアッセンブリーシャペロンが一過的に関与するダイナミックなプロセスである。初年度にαリングを構成する全サブユニットと関連シャペロンの発現・精製条件を完備するとともに、超分子質量分析、結晶構造解析、電顕解析などの構造解析手法を統合したことにより、活性中心を担うコア粒子の形成初期過程を探査する基盤を整えることができた。特に、金沢大学・内橋貴之博士のグループとの共同研究を通じて、当初の計画になかった高速AFM解析を用いた分子集合ダイナミクスの計測にも着手することができている。本年度に達成した重要な成果(プロテアソームの形成にスクラップ・アンド・ビルドの過程が存在し得ること)は、2015年末に論文公表している [Ishii et al. (2015) Sci. Rep. 5, 18167]。以上の成果を総合的に判断して極めて順調に研究は進展しているものと判断している。

今後の研究の推進方策

前年度に実施したα6とα7の相互作用系を対象にした構造解析を他のサブユニットとアッセンブリーシャペロンの相互作用系に拡張する。超分子質量分析などを駆使してプロテアソーム形成中間体同定を系統的かつ効率的に行うために、タンパク質への変異導入、化学修飾、安定同位体標識なども検討する。こうして同定されたプロテアソームアッセンブリー中間体について、前年度に古細菌プロテアソームホモログ系を対象にして確立したアプローチを統合し、さらに量子ビーム溶液散乱などを用いた構造解析を実施する。プロテアソームの形成プロセスは、プロテアソームサブユニットとアッセンブリーシャペロンの相互作用のエナジェティクスにおける微妙なバランスの上に成り立っていることが予想されることから、こうした問題に熱力学的・速度論的な観点からのアプローチもあわせて実施することを計画している。これにより得られる知見を総合して、プロテアソームアッセンブリーのメカニズムを分子の構造とダイナミクスの観点から統合的に理解し、創薬分子設計の基盤となる構造情報をもたらす。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Disassembly of the self-assembled, double-ring structure of proteasome α7 homo-tetradecamer by α62015

    • 著者名/発表者名
      Kentaro Ishii, Masanori Noda, Hirokazu Yagi, Ratsupa Thammaporn, Supaporn Seetaha, Tadashi Satoh, Koichi Kato, and Susumu Uchiyama
    • 雑誌名

      Sci. Rep.

      巻: 5 ページ: 18167

    • DOI

      10.1038/srep18167

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] 離合集散が織りなす生命分子機能の研究フロンティア2015

    • 著者名/発表者名
      加藤晃一, 稲垣直之
    • 雑誌名

      実験医学

      巻: 33 ページ: 1316-1320

  • [雑誌論文] 生命分子の自己組織化のダイナミクス2015

    • 著者名/発表者名
      加藤晃一, 佐藤匡史
    • 雑誌名

      化学工業

      巻: 66 ページ: 32-37

  • [学会発表] Structural insights into molecular assembly in the proteasomal systems2016

    • 著者名/発表者名
      Tadashi Satoh, Arunima Sikdar, Kazuyoshi Murata, Toshiya Kozai, Kentaro Ishii, Masanori Noda, Hiroki Kawamura, Hirokazu Yagi, Maho Yagi-Utsumi, Susumu Uchiyama, Takayuki Uchihashi, and Koichi Kato
    • 学会等名
      The 7th alan-Taiwan Joint Meeting on Neutron and X-ray Scattering
    • 発表場所
      京都大学 原子炉実験所
    • 年月日
      2016-03-12
    • 招待講演
  • [学会発表] Structural insights into molecular assembly of an archaeal homolog of proteasome assembly chaperone and its partner protein2016

    • 著者名/発表者名
      Arunima Sikdar, Chihong Song, Toshiya Kozai, Kentaro Ishii, Maho Yagi-Utsumi, Susumu Uchiyama, Takayuki Uchihashi, Kazuyoshi Murata, Tadashi Satoh, and Koichi Kato
    • 学会等名
      平成27年度 日本生物物理学会 中部支部講演会
    • 発表場所
      岡崎コンファレンスセンター(岡崎)
    • 年月日
      2016-02-29
  • [学会発表] 高速 AFM による 20S プロテアソーム関連タンパク質のダイナミクス観察2016

    • 著者名/発表者名
      小財稔矢,佐藤匡史,Arunima Sikdar,矢木宏和,矢木-内海真穂,内橋貴之,安藤敏夫,加藤晃一
    • 学会等名
      平成27年度 日本生物物理学会 中部支部講演会
    • 発表場所
      岡崎コンファレンスセンター(岡崎)
    • 年月日
      2016-02-29
  • [学会発表] Structural insights into working mechanism of PbaA, an archaealhomolog of proteasome assembly chaperone2015

    • 著者名/発表者名
      Arunima Sikdar, Tadashi Satoh, Kentaro Kumoi, Kentaro Ishii, Maho Yagi-Utsumi, and Koichi Kato
    • 学会等名
      Okazaki Institute for Integrative Bioscience Retreat 2015
    • 発表場所
      岡崎統合バイオサイエンスセンター(岡崎)
    • 年月日
      2015-12-09
  • [学会発表] Disassembly of the self-assembled, double-ring structure of proteasome α7 homo-tetradecamer by α62015

    • 著者名/発表者名
      Kentaro Ishii, Masanori Noda, Hirokazu Yagi, Ratsupa Thammaporn, Supaporn Seetaha, Tadashi Satoh, Koichi Kato, and Susumu Uchiyama
    • 学会等名
      Okazaki Institute for Integrative Bioscience Retreat 2015
    • 発表場所
      岡崎統合バイオサイエンスセンター(岡崎)
    • 年月日
      2015-12-09
  • [学会発表] ESI-MSによるプロテアソームサブユニット複合体の化学量論の解析2015

    • 著者名/発表者名
      石井健太郎,矢木宏和,加藤晃一,内山 進
    • 学会等名
      第42回BMSコンファレンス
    • 発表場所
      岐阜グランドホテル(岐阜)
    • 年月日
      2015-07-07
  • [学会発表] Native MSによるプロテアソームα7サブユニットの自己会合状態の解析2015

    • 著者名/発表者名
      石井健太郎,矢木宏和,加藤晃一,内山 進
    • 学会等名
      第63回質量分析総合討論会
    • 発表場所
      つくば国際会議場エポカルつくば(つくば)
    • 年月日
      2015-06-17

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公開日: 2017-01-06  

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