研究課題/領域番号 |
15H02495
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
周東 智 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (70241346)
|
研究分担者 |
福田 隼 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (30434450)
一ノ瀬 亘 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 特別研究員 (00636409)
有澤 光弘 大阪大学, 薬学研究科, 准教授 (40312962)
山口 浩明 東北大学, 大学病院, 准教授 (80400373)
小松 康雄 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 研究グループ長 (30271670)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | シクロプロパン / 三次元多様性 / レゾルビン / ヌクレオシド / ペプチドミメティクス / ライブラリー |
研究実績の概要 |
本課題では、シクロプロパンの構造特性に基づく三次元的多様性を鍵とする独自の分子設計を基盤として、困難かつ挑戦的な創薬化学研究を展開している。具体的には計画した4つの課題に取り組んだ。その成果を以下に述べる。 1.レゾルビン創薬化学: RvE2の11,12-位をオレフィン等価構造であるcis-シクロプロパンで置換したCPRvE2の効率的合成法を確立し、CPRvE2が予想通りRvE2安定等価体であること示した。さらに、RvE2の5位及び19位デオキシ体を合成した。RvE1については、全合成を達成した。βCPRvE2またはαCPRvE2を今後の研究におけるリード構造として有用であることが明らかとなった。 2.プロレニン受容体リガンド:当初の目的であるプロレニン基本ミメティックII (中央部残基X/Y = leu/Leu, Phe/Lys, Leu/Arg) の合成法を確立した。連続する3つの不斉点の構築が課題であったが、Ellman不斉補助基を用いるGrignard反応を鍵としてその構築に成功した。 3.核酸創薬:塩基部とシクロプロパン水酸基とを三次元的多様に制御した3種類のシクロプロパンヌクレオシド (CPNs) 骨格の合成法確立に成功した。 4.低分子ライブラリー:Pd触媒C-H活性化を経るアリールシクロプロパン類の収束的構築に成功した。本反応を鍵として、1,2,3-三置換アリールシクロプロパン及び1,1,2-トリアルキル置換シクロプロパンの効率的合成法を確立した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下に述べるように、各課題についておおむね順調に研究が進展している。 1.レゾルビン創薬化学: RvE2の11,12-位オレフィンをcis-シクロプロパンで置換したCPRvE2の効率的合成法を確立したのみならず、CPRcE2がRvE2の安定等価体として機能するという作業仮説を証明する成果を得た。さらに、RvE1については全合成を達成した。当初の計画通り、順調に研究が進展した。 2.プロレニン受容体リガンド:本課題の根幹となるプロレニン基本ミメティックII (中央部残基X/Y = leu/Leu, Phe/Lys, Leu/Arg) の合成法を確立できたことは大きな成果である。本法を用いて、様々なミメティクスの合成が可能であり、今後のプロレニン受容体リガンド構造活性相関研究の効果的な展開が期待出来る。 3.核酸創薬:塩基部とシクロプロパン水酸基とを三次元的多様に制御した3種類のシクロプロパンヌクレオシド (CPNs) 骨格の合成法の確立に成功した。本法を用いて、様々な新規CPNsの合成が可能であり、抗ウイルス構造活性相関研究、さらに核酸創薬研究の効果的な展開が期待出来る。 4.低分子ライブラリー:Pd触媒C-H活性化を経る1,2,3-三置換アリールシクロプロパン及び1,1,2-トリアルキル置換シクロプロパンの収束的かつ効率的構築法を確立した。ライブラリーを構築への展開へと活用出来る成果である。
|
今後の研究の推進方策 |
以下の通り、基本的には当初の計画に基づき研究を推進する。 1.レゾルビン創薬化学: リゾルビン (Rv)の構造活性相関研究の進展を図る。リードとして選択したCPLvE2対して、シクロプロパン歪みによる側鎖部配座制御を実施し、活性配座解明と高活性化を目指す。具体的には、シクロプロパン隣接位である10位及び13位にメチル基を導入した4種の立体・位置異性体 (10R-Me体, 10S-Me体, 13R-Me体, 13S-Me体) を合成する。LvE1に関しては、誘導体合成するためにより効率的な合成法を確立した後、シクロプロパン配座制御体を種々合成する。合成した化合物を用いて、光及び酸素に対する安定性、in vivo抗炎症活性を評価する。 2.プロレニン受容体リガンド:確立したプロレニン基本ミメティックII (中央部2残基 = leu/Leu, Phe/Lys, Leu/Arg) の合成法に基づき、予定通り構造活性相関研究を展開し、非ペプチド阻害剤リードを獲得する。 3.核酸創薬:確立したシクロプロパンヌクレオシド (CPNs) 骨格の構築法を用いて15化合物程度のCPNを合成し抗ウイルス活性を評価に供する。当初、CPNの合成法が確立後、直ちに核酸創薬へと研究展開する予定であった。しかし、CPNに抗ウイスルが期待されることに鑑み、その評価を優先した。次年度以降にオリゴヌクレオチドへと導入し、核酸創薬への展開を図る予定である。 4.低分子ライブラリー:Pd触媒C-H活性化を経る1,2,3-三置換アリールシクロプロパン及び1,1,2-トリアルキル置換シクロプロパンの効率的構築法を確立した。次課題として、1,1,2,3-四置換アリールシクロプロパンの合成法の開発に取り組む予定である。その後、多化合物を合成するライブラリー化反応としての応用が課題となる。
|