研究課題/領域番号 |
15H02497
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
二木 史朗 京都大学, 化学研究所, 教授 (50199402)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 抗体 / 細胞内送達 / エンドサイトーシス / バイオ高分子医薬品 / 膜傷害性ペプチド |
研究実績の概要 |
近年、抗体をはじめとしたバイオ高分子医薬品が新たな分子標的医薬として確固たる地位を築きつつある。しかし、現時点で市販されている抗体医薬は、細胞膜上の受容体や細胞外の病態関連因子を標的とするものであり、細胞内因子を標的としたものはない。これは、抗体を細胞内に効率的に導入する手法が確立されていないことに起因するものである。抗体を細胞内に効率的に導入することが可能であれば、抗体医薬の適用範囲は一層拡大し、様々な疾患の治療に貢献すると期待される。本研究では、溶血性等、高い膜傷害性を有するペプチドの効果的な構造・活性制御を通して、細胞内にバイオ高分子医薬品としての「抗体」を高効率送達する新しい方法論を開発することを目的とする。これらのペプチドの膜傷害性の発揮には、特定の立体構造(ヘリックス等)の形成が重要である場合が多い。構造規制リンカーの導入やペプチドの荷電状態の最適化により、(1)細胞外では膜傷害性を抑制し、(2)エンドソーム内では膜傷害性を誘起させるペプチドの構造制御法を開発することで、抗体の効果的な細胞内(サイトゾル)への送達を達成することを計画した。本年度は、膜傷害性ペプチドのスクリーニングを行い、クモ毒由来の候補ペプチドを選出し、これに変異を加えて細胞膜には損傷を与えず、エンドソーム膜を選択的に傷害できるペプチドの設計を行った。この結果、細胞膜に対して低損傷性であり、モデルバイオ高分子としてのポリデキストランや抗体(IgG)をエンドソームからサイトゾルへと効果的に放出できるペプチドが得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
9種類の抗菌ペプチドを化学合成し、その膜傷害性(細胞毒性)をWST-1試験により検定し、もっとも高い毒性を示したクモ毒ペプチドを得た。このペプチドの配列の改変体8種類を合成し、細胞膜の損傷性とエンドソームからサイトゾルへの高分子医薬品モデルとしてのポリデキストランの放出を検討した。この結果、細胞膜に対して低損傷性であり、エンドソームからのデキストラン放出活性を有するペプチドが複数得られた。さらに、最もよい結果を示したペプチドは抗体の効果的な細胞内移送を達成出来ることが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
さらに高活性のペプチドを設計するとともに、抗体の細胞内送達の応用例を増やし、目標を達成する。
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