研究課題
脂肪滴はおもに細胞質にあるが、少数の脂肪滴は核質にも存在する。本年度の研究では核質に存在する脂肪滴(以下、核内脂肪滴)について検討し、以下のような結果を得た。1)核内脂肪滴はpolymyelocytic leukemia body (PML小体)に近接して見られることが多かった。また核内脂肪滴の多寡は、PML小体を構成するPML蛋白質のうち、PML-IIの発現量の大小と非常に強く相関した。2)核内脂肪滴のほとんどは核質内に陥入する核膜構造(Nucleoplasmic reticulum [NR])、特に核内膜だけが陥入してできるtype IのNRに近接して存在した。type I NRの多寡もPML-IIの発現量と相関していた。3)細胞質脂肪滴が非常に多くても核内脂肪滴がほとんど見られない細胞種がほとんどであり、PML-IIが核膜に沿って分布しうるHuh7, U2OSなどでのみ核内脂肪滴が多数見られた。4)核内脂肪滴には中性脂質合成、燐脂質合成に関与する酵素が局在し、細胞質脂肪滴とは独立に形成されると考えられた。以上の結果は核内脂肪滴が細胞質脂肪滴とは異なる性質を持つことを示唆しており、今回明らかになった核内脂肪滴の性質はその生理的機能を探るための手掛かりとなると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
核内脂肪滴についての新たな知見をまとめ、Journal of Cell Biologyに論文掲載することができた。
今回得られた結果をもとに核内脂肪滴の性質解明を進める。また膜脂質動態についての検索を多角的に進める。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件)
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