研究実績の概要 |
1) 急速凍結・凍結割断レプリカ標識法でホスファチジルイノシトール3,4-二燐酸[PI(3,4)P2]の分布をナノレベルで可視化する方法を確立した。異なるイノシトール燐脂質を含むリポソームの凍結割断レプリカを用いることにより、TAPP1のPHドメインと GSTを融合させたリコンビナントタンパク質が PI(3,4)P2に特異的に結合することを確認した。この方法でNIH3T3細胞を検索すると、通常培養条件下の細胞ではほとんど標識が得られないが、10 mM 過酸化水素や50 ng/ml PDGF で刺激した細胞では細胞膜の細胞質側膜葉にほぼ均一に分布する強い標識が見られた。しかしPI(4,5)P2とは異なり、カベオラ周囲への集中は見られないことが明らかになった。 2) 静止期および窒素飢餓時の酵母で見られる脂肪滴のオートファジー(リポファジー)について急速凍結・凍結割断レプリカ標識法を用いて検索し、液胞(リソソーム)でのミクロファジーがラフト様ドメインの陥凹で起こること、ラフト様ドメインの形成には 酵母の NPCタンパク質オルソログ(Ncr1, Npc2)によるステロール輸送が必要であること、窒素飢餓時のリポファジーに必要なステロールは多小胞体の内部小胞が供給源になっていることなどを明らかにした。この結果は脂肪滴ミクロファジーの分子機序を明らかにした新規性の高い発見であり、また同時に NPC タンパク質が細胞内のステロール動態の制御とともに液胞膜のステロール濃度制御に重要な役割を持つことを示した。
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