1) 新生児一過性副甲状腺機能亢進症の発症要因が複雑だが、一つに母親からの胎児への胎盤を介したCa2+輸送不全が挙げられている。多くは生後数ヶ月で正常になる。上皮細胞でCa2+選択性チャネルとして機能するTRPV6変異が6症例(日本を含む数カ国の患児)に関わることを発見した。その変異はTRPV6の様々なドメインで見いだされた。TRPV6の形質膜発現に影響を与える例が複数あり、ヒトTRPV6に発見された変異を導入した細胞でのパッチクランプ法によるTRPV6電流解析では、著しい電流の減少が観察された。よって、新生児一過性副甲状腺機能亢進症は、母親から胎児へのCa2+輸送を阻害するTRPV6の変異で起こる常染色体劣性遺伝疾患であると推定された。2) マウス足底でミノール反応による発汗を確認して、マウス足底の発汗が環境温度依存的であることが分かった。その発汗がTRPV4欠損マウスで著しく減弱していることも明らかになった。ヒト手掌の発汗は手掌の摩擦力を強め手による物の把握に貢献する。そこで、ツルツルの坂をマウスが登れるかどうかを検証して、TRPV4欠損マウスで失敗が多いことが明らかになり、マウス足底の発汗にTRPV4が関与し、生理学的意義を有するものと結論した。3) TRPV1はPKCによるリン酸化で感作され、その活性化温度閾値が低下することを以前に報告している。TRPV1とアノクタミン1の共発現で、PMAによるPKCの活性化によって35度程度の温度刺激でもアノクタミン1によるクロライド電流の活性化を確認した。これは、TRPV1の感作によってもアノクタミン1が活性化しうることを意味しており、TRPV1とアノクタミン1の機能連関が炎症性疼痛発生にも関わることを示唆している。
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