研究課題
(1)開発した疲労度評価質問票のデータ収集を進めた。また、MRIによる脳機能イメージング研究においても本スケールによる疲労評価を導入した。(2)慢性疲労症候群患者と同様に健常者においても脳内炎症が認められるケースがあり、慢性疲労と脳内の神経炎症は密接に関連することを示唆する結果が得られた。(3)脳機能イメージング研究から、身体的疲労と精神的疲労に共通して誘発される脳の過剰活動、防衛機構、促進機構、疲労感の想起や予測など疲労感のさまざまな側面に関する脳神経基盤を明らかにし、亜急性・慢性疲労の統合的研究の基盤となる、急性疲労の中枢神経系機構の解明に成功した。また、精神的疲労状態においては、ネガティブな感情認知の偏りが認められずうつ病や不安障害の患者と異なる様相を示すことも明らかになった。安静時脳機能ネットワーク解析からは、精神的な疲労度と関連しデフォルトモードネットワークを中心とし一部の脳部位の活動が有意に変化することを明らかにした。(4)健常者においても慢性疲労症候群患者と同様に、慢性的に疲労度が高いほど前頭前野の萎縮の程度が大きいことが明らかとなった。(5)慢性疲労症候群患者に対し、疲労評価質問票や生理学的検査を用いて多彩な臨床症状がみられる患者の臨床病態(疲労・抑うつ度、Performance Status、QOL、睡眠覚醒リズム、酸化ストレス、自律神経機能など)を評価し、慢性疲労者との対比が可能な患者データリストを作成した。(6)ラット過労モデルを用いた動物実験では、持続的な疲労負荷により肝細胞の細胞内分解系が亢進することを同定した。一方では、肝細胞に発現するいくつかの転写因子が通常と異なる発現動態を示し、持続的な疲労負荷を反映するマーカーを発見した。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り研究を遂行できており、慢性疲労の分子神経メカニズムの統合的理解が進む研究成果を得ているため。
今後さらに被験者数を収集し、信頼性の高い慢性疲労の脳分子・機能・構造機構を明らかにする。また、慢性疲労モデル動物成果からヒトの慢性疲労メカニズムを推定できるように、共通項や矛盾項についての洗い出しを行う。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 4件、 招待講演 11件)
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