研究課題
1.脳機能・構造イメージングにより、ヒト大脳皮質の神経突起特性、自発的共振活動や皮質間の機能的・構造的連絡性(コネクトーム)についての大規模データ収集・解析法の基盤技術の構築と解析環境の整備を進め500例以上のデータ解析を可能とした。慢性疲労症候群の個々の症例毎の行動特性(易疲労性など)と脳機能・構造の関連性を統合的に調べる基盤ができた。2.脳磁図研究では、急性疲労によって誘発される脳の過剰活動によって惹起された防衛機構や、過剰活動を惹起する促進機構など疲労のさまざまな側面に関する脳神経基盤を明らかにし、亜急性疲労と関連のある脳部位の同定(上および下前頭回の一部)にも成功した。また、疲労の要因の一つとされる精神的ストレスに対する生体反応の個人差に関与する神経メカニズムも明らかにした。3.fMRIによる安静時脳機能ネットワーク解析からは、精神疲労状態では初期視覚領域間の機能的結合が弱まること、非疲労状態では負相関を示す、注意システムのネットワークとデフォルトモードネットの間の相関が損なわれることを明らかにした。4.慢性疲労症候群患者に対し、疲労評価質問票や生理学的検査を用いて多彩な臨床症状がみられる患者の臨床病態(疲労・抑うつ度、Performance Status、QOL、睡眠覚醒リズム、酸化ストレス、自律神経機能など)を評価し、慢性疲労者との対比が可能な患者データリストを作成した。5.疲労モデル動物を用いた研究では、徐々に恒常性維持機構の破綻を引き起こし、日常の疲労蓄積から慢性疲労状態に陥る疲労モデル動物を確立してきた。本モデルでは意欲の低下を示唆する自発行動量の回復が有意に遅延することから、H28年度は疲労負荷による脳内ドーパミン神経系の動態に関するPET研究を行った。その結果、側座核におけるドーパミンD2受容体の増加あるいはドーパミン分泌量の低下を示唆する結果を得た。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、脳機能・形態、分子動態研究を遂行できており、様々な疲労の側面の分子神経メカニズムに関する統合的理解が進む研究成果を得ているため。
今後さらに被験者数を増やしてデータを収集し、信頼性の高い急性~慢性疲労の脳分子・機能・構造機構を明らかにする。また、慢性疲労モデル動物に対する研究成果からヒトの慢性疲労メカニズムを推定できるように、共通項や矛盾項についての洗い出しを行う。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (16件) (うち国際共著 1件、 査読あり 16件、 オープンアクセス 8件) 学会発表 (38件) (うち国際学会 2件、 招待講演 26件) 図書 (1件)
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