研究課題
昨年度、大腸がん患者の健常部位の手術摘出サンプルを用いて、ヒト腸管粘膜固有層に存在し、エフェクターT細胞の増殖を抑制する自然免疫細胞サブセットHLA-DRhigh CD14+ CD163low CD160high細胞を同定した。今年度この細胞サブセットCD163low CD160high細胞の、クローン病患者、潰瘍性大腸炎患者での機能を解析した。クローン病患者では、CD163low CD160high細胞によるエフェクターT細胞の増殖抑制能が障害されていた。潰瘍性大腸炎患者では、CD163low CD160high細胞の数が減少するとともに、エフェクターT細胞の増殖抑制能も障害されていた。このように、炎症抑制(エフェクターT細胞の増殖抑制)能を有する自然免疫細胞サブセットの機能が、炎症性腸疾患患者では障害されており、この自然免疫細胞サブセットの機能が炎症性腸疾患の病態と深く関わっていることが明らかになった。また、ヒト腸管粘膜固有層に存在する他の自然免疫細胞サブセットとしてCD103+樹状細胞がある。小腸粘膜固有層に存在するCD103+樹状細胞の機能はこれまでに報告があるが、大腸粘膜固有層では報告がない。そこで、大腸粘膜固有層に存在するCD103+樹状細胞の機能を解析した。その結果、小腸粘膜固有層に存在するCD103+樹状細胞と同様、ナイーブT細胞と共培養するとFoxp3+の制御性T細胞を誘導した。このように、大腸粘膜固有層CD103+樹状細胞も抗炎症性機能を有する自然免疫細胞サブセットであることを見出した。さらに、潰瘍性大腸炎患者での大腸粘膜固有層CD103+樹状細胞を解析すると、Foxp3+の制御性T細胞を誘導することができなかった。このように、大腸粘膜固有層CD103+樹状細胞も、炎症性腸疾患の病態と深く関わっていることが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
申請時の研究計画に沿い、ヒト大腸粘膜固有層に存在する自然免疫細胞サブセットを同定し、その機能を明らかにするとともに、炎症性腸疾患患者でその機能が障害されており、病態と深く関わっていることを明らかにすることができた。
ヒト大腸粘膜固有層に存在する自然免疫細胞サブセットの機能を明らかにすることができた。来年度以降は、ヒト腸内環境として、日本人とインド人の腸内細菌叢の比較解析を詳細に行っていく予定である。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 4件、 招待講演 10件)
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