研究実績の概要 |
これまでにヒト大腸粘膜固有層に局在する自然免疫担当細胞のサブセットを解析し、Th17細胞を誘導するサブセット、エフェクターT細胞の増殖を抑制するサブセットを同定してきた。今年度は、腸管炎症誘導に関わるヒト腸内細菌叢を明らかにするため、日本人47名とインド人50名の健常人より糞便サンプルを採取し、次世代シークエンサーを用いて、腸内細菌叢を解析した。インド人は、日本人に比べて穀物類(食物繊維を多く含む食事)を多く摂取している。一方日本人は、インド人に比べて動物性タンパク質を多く摂取している。すなわち食生活の違いによる腸内細菌叢の変化を比較解析した。その結果、インド人ではプレボテラ属細菌が50%を超える場合もあるほど優勢であること、日本人では、バクテロイデス属細菌が優勢であることが明らかになった。プレボテラ属細菌の中では、Prevotella copriがほとんどを占めていた。腸内細菌叢については、これまでにもいくつかの報告がでている。そこで、連携研究者の中村昇太博士と共同で開発した真菌叢の網羅的解析技術(真菌間で保存されているITS1領域の配列解析)を用いて、腸内真菌叢の比較解析を行った。その結果、インド人ではカンジダ属真菌およびアスペルギルス属真菌が優勢となっていること、一方日本人ではサッカロマイセス属真菌が優勢となっていることが明らかになった。インド人で優勢となっているカンジダ属真菌では、Candida albicans, Candid tropicalisが主たる真菌であった。このように、地域、食生活の違いにより、腸内細菌叢ばかりでなく、腸内真菌叢にも変化が起こることを明らかにした。
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