研究課題/領域番号 |
15H02530
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
石井 晃 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30252175)
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研究分担者 |
財津 桂 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30700546)
草野 麻衣子 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (60733574)
土橋 均 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 招へい教員 (40596029)
妹尾 洋 愛知医科大学, 医学部, 教授 (50236113)
小川 匡之 愛知医科大学, 医学部, 講師 (50559937)
那須 民江 中部大学, 生命健康科学部, 教授 (10020794)
林 由美 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30632707)
内藤 久雄 藤田保健衛生大学, 医学部, 講師 (90547556)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 危険ドラッグ / 法中毒 / 質量分析 / 合成カンナビノイド / カチノン / 飛行時間型質量分析計 / タンデム質量分析計 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、最新質量分析及び通常の質量分析機器を組み合わせ、合成カンナビノイドを含む危険ドラッグの超高感度・特異的同定法と、簡易で包括的なスクリーニング法を開発することである。 合成カンナビノイドについては、従来行われた研究を継続し、ヒト血漿中MAM-2201, AM-2201, AM-2232及びこれら代謝物について、高速液体クロマトグラフ-四重極飛行時間型質量分析計(LC-QTOFMS)を用いた高感度・特異的分析法を開発した。これらの化合物の定量限界は概ね0.5 - 1 ng/mlと極めて高感度で日内及び日間変動も13 %以内であり、十分実務に応用可能であると考えられる。 実際の中毒死例では、5-fluoro-ADB中毒が疑われた事例では、LC-QTOFMSのinformation-dependent acquisition (IDA)モードによるnon-targeted screeningでは、5-fuolo-ADBは検出できず、当時流通していた薬物を組み込んだデータベースを用い、product ion modeによるターゲット分析を併用することで、死亡例においても極めて低い濃度でしか認められない5-fluoro-ADBの血液からの検出、同定が可能となった。 次いで、我々は、GC/MS/MSによる危険ドラッグの異性体識別を開発した。危険ドラッグには異性体を有するものが多く、法的および毒性学的観点から、異性体の識別が極めて重要となるため、ガスクロマトグラフタンデム質量分析計(GC/MS/MS)を用いて、危険ドラッグ(JWH-081, JWH-122及び JWH-210)の位置異性体をマススペクトルを用いて確実に識別する方法を開発した。 現在、我々は、危険ドラッグ、特に合成カンナビノイドの代謝経路の分析と、中枢神経等における内在性の代謝物の変化について検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
まず、合成カンナビノイドを含む危険ドラッグの超高感度分析法については、既にvalidationも含む分析法を確立し、実際例の分析も含んだ形で発表を行っており、順調に経過している。 また、危険ドラッグの代謝経路の推定については、従来行ってきたMAM2201に引き続き、alpha-PHP及びアセチルフェンタニルについても代謝経路を推定し、合成した標準品と比較して代謝物の同定を行った。 加えて、危険ドラッグの毒性機序の解明に不可欠な、内在性代謝物の変動についても、多変量解析による分析を行っており、今注目すべきターゲット分子も次第に明らかとなってきている。 これらを総合すると、本プロジェクトは当初の計画以上に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後、危険ドラッグの超高感度分析については、従来のLC-QTOFMS及び超高感度タンデム質量分析系による分析を継続するとともに、LCのミクロ化を試みる。ミクロ化に成功すれば、今後、超微量サンプルや、低濃度のサンプルの分析も可能になると思われる。 危険ドラッグの代謝経路の分析に関しては、血液や尿のみならず、胆汁や臓器等での代謝物の追跡及び同定を行い、危険ドラッグの検出の幅を広げることも考えている。 さらに、危険ドラッグによる内在性代謝物の変化については、代謝酵素の変化の分析を行い、毒性機序のさらに精密な解析を試みる。
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