研究実績の概要 |
羊膜の起源となる胚外壁側葉中胚葉から鰓弓や心臓内に細胞が流入し、血管内皮細胞や心筋細胞などに分化すること、その過程でBMPおよびFGFシグナルが関与することを論文発表した(Asai R, et al. Sci. Rep. 7(1):8955, 2017)。この内容をさらに発展させ、ウズラ→ニワトリキメラ移植を用いて原羊膜の同所移植によってウズラ移植片由来細胞の胚内流入後の運命を単一細胞レベルのRNA-seqを用いて解析し、血管内皮や心筋分化の確認とともに新たな細胞群への寄与を示唆する知見を得た。また、心臓内に遊走する神経堤細胞についても単一細胞RNA-seqによる網羅的遺伝子発現解析を行い、Sox10陽性のグリア前駆細胞様細胞やSox9陽性の軟骨芽細胞様細胞の存在やと血管平滑筋分化との関係が明らかになるとともに、免疫染色などによって心臓内の神経堤細胞の多様な亜集団の分布や弁形成、血管形成への役割などが明らかになった。さらに、冠動脈形成に関しては、胎生期心流出路に形成される毛細管網が血管とリンパ管形成の共通の母体となり、セマフォリンのアイソフォームとその受容体プレキシンによる異なるシグナル経路がその分化に関与すること、この毛細管網が二次心臓領域に起源を有すること、リンパ管形成が冠動脈入口部のリモデリングに関与することによって正常な2本の冠動脈が形成されることなどを明らかにし、現在論文投稿中である。さらに、セマフォリン-プレキシンシグナルが心筋虚血領域でのリンパ管形成の制御因子として働くことを明らかにするとともに、そのシグナル介入によって梗塞後の線維化や心機能低下を有意に軽減することをマウス実験モデルを用いて証明し、このシグナル経路が心筋梗塞治療の新たな標的となる可能性を示した。
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