研究課題/領域番号 |
15H02545
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
荒瀬 尚 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (10261900)
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研究分担者 |
末永 忠広 大阪大学, 微生物病研究所, 准教授 (20396675)
平安 恒幸 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特任助教(常勤) (30585170)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ミスフォールド蛋白質 / 自己免疫疾患 / MHC |
研究実績の概要 |
特定のHLAクラスIIアリルは、関節リウマチをはじめ多くの自己免疫疾患の感受性を最も強く左右するため、HLAクラスIIがどのように自己免疫疾患に関与するかを解明することが重要である。しかし、HLAに提示される抗原を含めてそのメカニズムは依然として明らかでない。我々は、HLAクラスIIの疾患感受性に相関する初めての分子機構として、ミスフォールド蚕白質/HLAクラスII分子複合体を発見した。疾患感受性アリルのHLAクラスIIに会合した細胞内のミスフォールド蛋白質が自己抗体の標的分子として、発症に関与していると予想される。そこで、本研究ではミスフォールド蛋白質HLAクラスII複合体の解析によって自己免疫疾患の発症機構の解明を目的とした。その結果、ミスフォールド蛋白質HLAクラスII複合体を用いることで、通常の臨床検査では検出できない自己抗体も検出できることが判明した。特に、抗リン脂質抗体症候群において通常の臨床検査では検出できない自己抗体がβ2グライコプロテインI/HLAクラスII複合体を用いることで検出可能になることが判明した。さらに、原因不明の皮膚潰瘍の患者さんにおいても、その約30%においてβ2グライコプロテインI/HLAクラスII複合体に対する抗体が認められ、抗リン脂質抗体症候群が皮膚潰瘍に関与していると考えられ、抗リン脂質抗体症候群の診断にも重要であると考えられた。また、ANCA関連血管炎の自己抗体においても同様な特異性が認められた。このように、ミスフォールド蛋白質/HLAクラスII複合体が自己免疫疾患で産生される自己抗体の主要な標的抗原であり、自己免疫疾患の発症に関与していると考えられる。さらにミスフォールド蛋白質/HLAクラスII複合体によってどのように自己抗体の産生が誘導されるかを解明することによって、自己免疫疾患の発症機構が明らかになると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
タンパク質/MHC複合体に対する抗体ばかりでなく、マウスにおいてはペプチド/MHC複合体に対する抗体も存在する場合もあることが明らかになってきたため、ペプチド/MHC複合体に対するモノクローナル抗体による解析を追加した。しかし、モノクローナル抗体の作成に時間がかかり、やや実験に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
ミスフォールド蚕白質/HLAクラスII分子複合体が自己免疫疾患の発症にどのように関与しているかを明らかにするために、ミスフォールド蚕白質/HLAクラスII分子複合体を用いた新たな動物モデルを樹立を実施している。本研究により、ミスフォールド蛋白質/HLAクラスⅡ分子複合体を介した自己免疫疾患発症機構、および、自己免疫疾患における自己抗体の産生機構が明らかになることが期待される。また、本研究成果を利用して、MHCクラスII分子の発現を標的にした新たな治療薬開発にも発展する可能性が考えられた。
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