研究課題
申請者らが設立・管理するてんかん遺伝子バンクと次世代シークエンサーを利用して変異をスクリーニングした。その結果、主に乳児早期てんかん性の脳症で多数の遺伝子変異を発見した。なかでも、早期ミオクロニー脳症で、世界で初めてその原因としてGABAA受容体β2サブユニットをコードする遺伝子、GABRB2の変異を発見した。早期ミオクロニー脳症の発症にイオンチャネルの関与を示した初めての事例となった。さらにDravet症候群において、Naチャネルα1サブユニットの遺伝子SCN1Aの変異を我々が同定した285例をもとに、遺伝子と重症度との関係を明らかにし、また治療薬の選択に遺伝子型が関与する可能性を示した。また、このSCN1A変異を持つてんかんモデル“ラット”を最新の遺伝子改変技術で作出した。さらに女性のみが発症する特異なてんかんPCDH19関連てんかんの責任遺伝子PCDH19に変異をもつラットも同様の手法で作出した。SCN1A遺伝子異常を持つDravet症候群の患者3人から新たにiPS細胞を樹立した。さらにすでに樹立していたDravet症候群の患者から樹立したiPS細胞を遺伝子編集技術をつかうことにより、“人工健常iPS細胞”を作出した。さらに慶応大学との共同研究により、iPS細胞を特異的にグルタミン酸作動性の興奮性ニューロンまたはGABA作動性の抑制性ニューロンに分化誘導させる方法を確立した。この方法を用いて、Dravet症候群では興奮性ニューロンの電気活動は変わりないが、抑制性ニューロンの応答が悪いことを示した。
2: おおむね順調に進展している
今年度の本研究の具体的な目標は以下の三点であった。A.てんかん遺伝子バンクの資料をもとに、次世代シークエンサーにより遺伝子変異を同定する。B.見出された遺伝子変異を有する“ラット”を作出し、てんかんの分子病態を in vivo で明らかにする。C.変異を導入した“人工患者iPS細胞”を用いて、てんかんの分子病態をex vivo で明らかにする。A.に関して主に乳児早期てんかん性の脳症で多数の遺伝子変異を発見した。なかでも、早期ミオクロニー脳症で、世界で初めてその原因としてGABAA受容体β2サブユニットをコードする遺伝子、GABRB2の変異を発見した。またDravet症候群において、Naチャネルα1サブユニットの遺伝子SCN1Aの変異を我々が同定した285例をもとに、遺伝子と重症度との関係を明らかにし、また治療薬の選択に遺伝子型が関与する可能性を示すことができた。B.に関してこのSCN1A変異を持つてんかんモデル“ラット”を最新の遺伝子改変技術で作出した。さらに女性のみが発症する特異なてんかんPCDH19関連てんかんの責任遺伝子PCDH19に変異をもつラットも同様の手法で作出した。ただし、てんかんの分子病態を in vivo で明らかにするところまで達成することができなかった。C.に関して、SCN1A遺伝子異常を持つDravet症候群の患者3人から新たにiPS細胞を樹立した。さらにすでに樹立していたDravet症候群の患者から樹立したiPS細胞を遺伝子編集技術を使うことにより、“人工健常iPS細胞”を作出した。さらに慶応大学との共同研究により、iPS細胞を特異的にグルタミン酸作動性の興奮性ニューロンまたはGABA作動性の抑制性ニューロンに分化させる方法を確立した。この方法を用いて、Dravet症候群では興奮性ニューロンの電気活動は変わりないが、抑制性ニューロンの応答が悪いことを示すことができた。以上より、研究の進捗をおおむね順調に進展していると自己評価した。
今までの研究期間で、研究は当初の目的、目標に従いおおむね順調に進展しているため、今後の研究も従来の方策をさらに拡大していくことを目指している。具体的にはA.てんかん遺伝子バンクの資料をもとに、次世代シークエンサーにより遺伝子変異を同定することをさらに加速して、今回のDravet症候群で得られたように、遺伝子型と表現型の関係を、他の素因性てんかんで明らかにしてとくに、Dのてんかんの予防法・治療法に寄与できるようにする。B.見出された遺伝子変異を有する“ラット”を作出したので、今後はその動物をさらに、ラットにとらわれずマウスなどの齧歯類の遺伝子改変動物を作出して、脳スライスの電気生理学的研究を利用して、てんかんの分子病態を in vivo で明らにする予定である。C.変異を導入した“人工患者iPS細胞”等を持ち、isogenicなiPS細胞を利用して、素因性てんかんの分子病態をex vivo で明らかにする予定である。D. BとCを利用し、とくにすで確立したiPS細胞を特異的にグルタミン酸作動性の興奮性ニューロンまたはGABA作動性の抑制性ニューロンに分化誘導させる方法に利用する予定である。すなわち、isogenicなiPS細胞をグルタミン酸作動性の興奮性ニューロンまたはGABA作動性の抑制性ニューロンにそれぞれ分化誘導して、ハイスループット機器にて、drug repositioning等の方法による、分子病態に基づく革新的なてんかんの予防法・治療法を開発することに注力する予定である。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 3件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 4件、 招待講演 3件) 図書 (3件)
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