本年度は、我々の同定した腱・靱帯に特異的な転写因子Mkxの腱・靱帯組織の発生と維持に必須の機能とその分子メカニズムの解明を更に推進した。特に、Mkxノックアウトラットのフェノタイプである、アキレス腱の異所性骨化の分子メカニズムについて、分子生物学的、組織学的、生理学的に詳細な研究を行った。 まず、クロマチン免疫沈降-シークエンスから得られた情報を基に、Mkxが腱における遺伝子発現制御をどのように行っているか、また、それがどのように腱の組織構築に関わっているかを検討した。腱組織における遺伝子発現は、腱細胞のRNAを網羅的に次世代シークエンサーを用いて、シークエンスすることによって解析した。これによって、Mkxによって直接制御される下流遺伝子を同定し、Mkxを起点とした遺伝子ネットワークを明らかにすることができた。 また、Mkxを制御する上流遺伝子として、スクリーニングにおいて候補に挙がった遺伝子群を中心に、それらの機能を解析し、Mkxの発現がどのように調節されるかを解析した。 更に、新たにMkxの遺伝子改変ラットを作成し、時空間特異的にMkxをノックアウトする系を構築、これを用いて、Mkxの発生と恒常性の両方の機能を解析した。これによって、特に、生後におけるMkxの機能をこのシステムで検討することができた。 これらの結果より、Mkxのもつ腱組織の発生・分化における役割を解明するとともに、腱組織の恒常性維持および修復における機能の一端を明らかにした。
|