研究実績の概要 |
リプログラム軟骨細胞様細胞である290-2-14細胞を用いてスクリーニングを行い、軟骨細胞マーカー発現を上昇させる化合物A-674563を発見した。この化合物は、マウス培養軟骨細胞においても軟骨マーカー発現を上昇させた。シクロヘキシミド、BafilomycinA1、MG132を使用した実験を行い、この化合物は軟骨マーカー遺伝子発現を促進する転写因子であるSox9蛋白質の分解を抑制しその蛋白量を増やすとの結果を得た。トランスクリプトーム解析を行い、この化合物は蛋白質の脱ユビキチン化を促進するUsp29(ubiquitin-specific peptidase 29)遺伝子の発現を上昇させることを見出した。軟骨細胞の性質を維持する機構として、Sox9蛋白質の分解を抑制することでその蛋白量を増やし、軟骨マーカー発現を促進するメカニズムがあると考えた。この結果を論文(T. Kobayashi, K. Fujita, T. Kamatani, S. Matsuda, N. Tsumaki, A-674563 increases chondrocyte marker expression in cultured chondrocytes by inhibiting Sox9 degradation, Biochem. Biophys. Res. Commun., 495 (2018) 1468-1475.)に報告した。 また、SIK3が軟骨細胞分化を制御する機構を調べるために、SIK3ノックアウトマウスの軟骨を用いてメタボローム解析とRNA seq解析を行った。その結果、1つの代謝産物がSIK3ノックアウト軟骨で低下し、その代謝産物の合成を阻害する酵素のmRNA発現が上昇していることが判明した。代謝による軟骨分化制御機構の可能性を示唆すると考える。
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