研究課題/領域番号 |
15H02563
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
大山 力 弘前大学, 医学研究科, 教授 (80282135)
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研究分担者 |
羽渕 友則 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00293861)
畠山 真吾 弘前大学, 医学部附属病院, 講師 (10400136)
坪井 滋 弘前大学, 医学研究科, 客員研究員 (20526727)
盛 和行 弘前大学, 医学研究科, 助教 (40266903)
米山 徹 弘前大学, 医学研究科, 助教 (50587649)
古家 琢也 弘前大学, 医学研究科, 准教授 (60321965)
橋本 安弘 弘前大学, 医学研究科, 准教授 (60322939)
飛澤 悠葵 弘前大学, 医学研究科, 助教 (70623768) [辞退]
米山 高弘 弘前大学, 医学部附属病院, 講師 (90374834)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 前立腺癌 / 前立腺特異抗原 / 糖鎖 |
研究実績の概要 |
本年度は、癌性変異糖鎖PSA定量アッセイシステムの商品化を実施すべく、ミュータスワコーi30を用いた測定系を開発した。ミュータスワコーi30は、プラスチック基板上に微細流路中を配したマイクロチップを用いて、微細流路中で等速電気泳動によるサンプル濃縮を実施し、その後レクチン親和性電気泳動を行うシステムである。本測定系の場合は、S2,6-PSA(正常者あるいは前立腺肥大症)とS2,3-PAS(前立腺癌患者)の分離を行い、遊離型PSA(free PAS)総量に占めるS2,3-PSAの割合を求める。S2,3-PSAのAUCは0.81であり、PSA及びF/T比よりも有意に良好であった。また、表面プラスモン共鳴励起増強蛍光分光(SPFS)超高感度イムノアッセイ装置を用いたレクチン-抗PSA抗体サンドウィッチイムノアッセイ法による血清糖鎖変異PSA-Gi検査法も開発した。本年度は、PSA-Gi検査の前立腺癌診断能力を既存のF/TおよびPSA検査と比較した。前立腺生検時の血清386例(癌189例、非癌184例、再生検陽性症例の初回生検時血清14例)のtotal PSA値、F/Tをアーキテクトtotal/Free PSAで測定し、PSA-Gi値をSPFSイムノアッセイ装置で測定した。PSA-Gi値は、癌症例で有意に高値を示し、total PSA 20 ng/mL以下の症例におけるROC解析から、PSA-Gi(AUC 0.807)の癌診断精度はF/T(AUC 0.716)およびtotal PSA(AUC 0.641)を凌駕した。さらに初回生検陰性で再生検で癌が発見された症例14例中9例(64.3%)で、初回生検時のPSA-Gi値が有意に高値であった。PSA-Giは、既存のF/TおよびPSA検査よりも癌診断能力に優れ、生検絞込みに有用である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PSAを凌駕する診断精度を有するアッセイ系開発が本研究の目標であったが、PSAに付加される糖鎖構造の癌性変異を利用したアッセイ系のうち、S2,3PSAはアッセイ系がほぼ完成した。知財の確保も終了し、前立腺癌の診断薬として保険収載を目指している。現在、PMDAと相談しながら保険収載のための臨床試験を立案中である。
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今後の研究の推進方策 |
S2,3PSAはPMDAと事前相談しつつ保険収載を目指した臨床試験を実施する。PSA-Giの前立腺癌鑑別および悪性度診断バイオマーカーとしての価値を実証することを目標として、プロトタイプ機を用いた臨床サンプルからのデータ取得を進める。中間評価において要素技術検討機によるPSA-Gi診断性能が、既存項目Total PSAおよびF/T(free PSAとtotal PSAの量比)と比較して明確な優位性をもって確認されたことから、参入市場要求に対応したプロトタイプ装置による臨床性能を検証する。また健常者検体や海外臨床検体を対象とした追加試験により、PSA-Giカットオフ値の仮設定や価値検証の拡大を進める。前年度進めた悪性度評価結果を受けて、保険申請を想定した本指標のクライテリア設定に向け、他の臨床情報と組み合わせた医療経済効果試算を進めることで、PSA-Gi価値の最大化を図る(開発項目1)。薬事対応を見越した試薬キット開発として、各試薬の規格を仮設定したうえで保存安定性(6か月以上の見込み確認)を担保した試薬を開発し、プロトタイプ機において試薬基本性能の最終目標値を確認する。プロトタイプ機において仮設定したタームチャート案の検証とともに、仮設定したSPFS光学測定や反応などのプロトコル検討を通じて最終目標達成を実証する。これを基にプロトタイプ機仕様を導出して、試作検討を開始する。本年7月に開催される米国臨床化学会等での学会発表(計画)、BioJAPAN展示会発表さらに、多施設評価に関する論文発表などを並行して進めることにより、本テーマ開発中のバイオマーカーおよびシステムの啓発活動を加速する。
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