研究課題/領域番号 |
15H02564
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
木村 正 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90240845)
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研究分担者 |
馬淵 誠士 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00452441)
遠藤 誠之 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (30644794)
熊澤 惠一 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90444546)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | MDSC / エストロゲン / 子宮頸癌 / 造血幹細胞 |
研究実績の概要 |
我々は、骨髄由来免疫抑制細胞(Myeloid-Derived Suppressor Cells:MDSC)に着目し、①女性ホルモンがMDSCの誘導に与える影響、②妊娠中の女性ホルモンの増加が子宮頸癌の進展に与える影響、③流産・妊娠高血圧症候群におけるMDSCの役割の解明、④MDSCの制御法の確立とその臨床応用、を目指して研究を行っている。 昨年度は、女性ホルモンがMDSCの誘導に与える影響に焦点を絞り、In vitroおよびIn vivoにおける研究を実施した。まずICRマウスを用い、エストロゲンが、マウス骨髄における造血能を刺激するか?、エストロゲンがマウスにおけるMDSC産生を促進するか?、エストロゲンが子宮頸癌の進展を促進するか?について検討を行った。 その結果、エストロゲン投与により、ICRマウスの骨髄細胞数、造血幹細胞数が有意に増加することが示された。また、エストロゲン投与により、ICRマウスの末梢血および脾臓におけるMDSCが有意に増加することが確認できた。さらに、造血幹細胞を無菌抽出し、Ex vivoにおいてエストロゲンを投与する実験により、エストロゲンが造血幹細胞のMDSCへの分化を促進することを証明しえた。つまり、エストロゲンが、ICRマウスにおいて、造血幹細胞の増殖およびMDSCへの分化を促進することが証明できた訳である。さらに我々は、外因性のエストロゲン投与が子宮頸癌の進展を促進することも、ヌードマウスを用いた研究により証明している。これらの研究成果は、エストロゲンがMDSCの誘導を介して子宮頸癌の進展を促進している可能性を示している。エストロゲンによって誘導されたMDSCがどのようにして子宮頸癌の進展を促進するかについての詳細なメカニズムは現時点で不明であるが、我々はその一端として、MDSCが血管新生促進因子Bv8を発現し、血管新生の促進を介して腫瘍の進展を促進している可能性を見出し、昨年度に報告している(Kawano M, Mabuchi S, Kimura T, et al. Sci Rep 2016)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の研究により、エストロゲンが、マウス造血幹細胞の増殖およびMDSCへの分化を促進すること、またヌードマウスに皮下移植された子宮頸癌の進展を促進することを証明した。エストロゲンによって誘導されたMDSCがどのようにして子宮頸癌の進展を促進するかについての詳細なメカニズムは完全には解明されていないが、我々はそのメカニズムの一部として、MDSCが血管新生促進因子Bv8を発現し、血管新生の促進を介して腫瘍の進展を促進している可能性を見出し、報告することができた(Kawano M, Mabuchi S, Kimura T, et al. Sci Rep 2016)。昨年度の研究内容は本研究の根幹となるであり、その研究課題の大部分が達成できているため、本研究は概ね計画通り進行していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
我々はMDSCに着目し、本研究において、①女性ホルモンが造血能・MDSCの誘導に与える影響、②妊娠中の女性ホルモンの増加が子宮頸癌の進展に与える影響、③流産・妊娠高血圧症候群におけるMDSCの役割、④MDSCの制御法の確立とその臨床応用、についての検討を行う予定である。このうち、①については、ほぼ研究を完了している。今後は、我々が保有する子宮頸癌細胞株およびマウス癌移植モデル、妊娠マウス、また流産マウスモデルを用い、②③④について研究を進める予定である。
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