研究課題/領域番号 |
15H02567
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
檜山 英三 広島大学, 自然科学研究支援開発センター, 教授 (00218744)
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研究分担者 |
外丸 祐介 広島大学, 自然科学研究支援開発センター, 教授 (90309352)
金輪 真佐美 (福永真佐美) 広島大学, 自然科学研究支援開発センター, 助教 (00284208)
上田 祐華 広島大学, 病院(医), 病院助教 (70624641)
栗原 將 広島大学, 病院(医), 医科診療医 (40724894)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 癌 / 細胞、組織 / 核酸 / バイオテクノロジー / 臨床 |
研究実績の概要 |
広島大学に保存された神経芽腫、肝芽腫、腎芽腫のうち、治療前の初代培養にて腫瘍細胞が選別され、凍結病理検体および血漿 が同時に保存されている164検体、樹立株24株、腹水・胸水69検体、治療前と経過中の血漿検体1000検体を対象として検討を行った。1.腫瘍特異的選別マーカーの検出: 蒸着固定方法を変更して質量顕微鏡にて細胞表面の特異的な局在蛋白分布検索を施行したが、平成28年度と同様に脂質が主体であった。 2.一細胞解析(セロミクス解析)と一細胞ゲノム解析(ゲノミクス解析):細胞1個のレベルでのセロミクスでは分離解析条件を変更したところ、 ピークが200以上得られる条件が得られ、細胞株24株に加えて小児がん患者から得ていた初代培養細胞と期間中の循環腫瘍細胞(CTC)の検討を開始した。一細胞ごとの特徴的な遺伝子変化、遺伝子発現を次世代シークエンサー (NGS)によるゲノミクス解析とセロミクスの比較検討が可能となった。 3.細胞株上清、血漿中のマーカー検索:細胞の培養上清および血漿から、Cell Free DNA(cfDNA)を抽出し、NGSにて変異検出を行なった。βカテニン (CTNNB1)遺伝子)等の欠失に関しては領域特異的プローブを設計して検討した。さらに、血漿(血清)中のエクソソームを抽出してmicroRNAを採取し、NGSで検索し、その発現レベルの検索を継続した。4. Cancer fluid biopsyとして、12名の担癌患者の全血からCD45などの表面マーカーCD45にて造血系細胞を除去し、GD2やCD44, CD90などがん細胞マーカーを用いて CTC(循環腫瘍細胞)を導入した細胞濃縮装置(IsoFluxxシステム)にて分離採取して、上記の2で解析した。 上記の結果から、Cancer fluid biopsyの有効性を示し、臨床への応用法を引き続き検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
広島大学に保存し、既に病理分類と予後調査が完了した神経芽腫、肝芽腫、腎芽腫を含む約1000例のうち、治療前の初代培養にて腫瘍細胞が選別され、凍結病理 検体および血漿が同時に保存されている200検体、樹立株23株を対象にする。さらに、平成28年度は、初代培養細胞や循環腫瘍細胞(CTC)の解析を開始し、さらに、腹水・胸水80検体の検討や、治療前と経過中に採取した血漿検体の検討を順次追加して約2000検体の検討を行うことを最終目標として研究を行なっている。平成28年度も、一時、次世代シークエンサー(NGS)の機器不良や質量分析器の分解能低下の問題で進捗が少し滞ったが、現在は血漿では1000検体を超える検討ができており、概ね順調に進んでいると考えている
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度以降は、広島大学に現有検体を中心に検索し、前臨床試験段階の検討を行なう。また、必要に応じてバイオバンクなどの腫瘍バンクからの供給を依頼する。 1.一細胞解析(セロミクス・ゲノミクス解析):によるバイオマーカーの確定:質量顕微鏡を用いた検索に限界があるために、走査型電顕の計測を加えてがん細胞表面の形状の検討を行う。 2.血液中CTC細胞、遊離核酸解析:すでに、腫瘍からの初代培養細胞と下記の3で得られる循環腫瘍細胞(CTC)による一細胞解析を継続する。また、血漿や血清から得られる遊離DNAおよびエクソソーム抽出によるRNAを用いた小児がん診断マーカーを確定する。特に腫瘍特異的な遺伝子変 異、転座などの検出法、特異的なタンパクや抗体などの検出法を確立する。 3.Cancer fluid biopsyへの応用:実際の小児がん症例から、全血を採取してからCD45による造血系細胞を除去し、さらにがん細胞マーカーにてCTCを分離採取し、有用な分離マーカーを確定する。これらから上記のCTC分離と、遊離核酸解析を行い、実際の診断、治療効果の判定、早期再発のモニタリングへの有用性を検証し、ベッドサ イドで検証できるシステムを構築する。 4.可能な範囲で、前臨床試験システムとしてのセルテスティングとアニマルテスティングを行なう:分子標的への抗体、阻害剤、あるいは抑制実験によって、マーカー変動を一細胞解析評価するセルテスティングシステムを構築する。また、免疫不全マウスの接種した腫瘍からのCTC解析や治療効果を判定するアニマルテスティングシステムの構築を目指して研究を進める予定である。
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