研究実績の概要 |
敗血症は依然致死率が高く,新規発見が必要な重要課題である.遺伝的要因の個人差である遺伝子多型が敗血症の転帰に影響を与えることが広く知られている.IL-10は抗炎症性・免疫抑制にはたらく重要な遺伝子である.またIL-10ファミリー遺伝子(IL-10, IL-19, IL-20, IL-24)は1q32領域(200 kb)に隣り合って存在する.そこでこれらのIL-10ファミリー遺伝子の一塩基多型 (single nucleotide polymorphisms,SNPs)は,敗血症性ショック患者の28日死亡率上昇と関連するかどうか検証した.敗血症性ショック患者(n=1193)を対象にIL-10ファミリー遺伝子の13 tag SNPsをgenotypingし,28日死亡率をprimary outcomeとして関連解析した.IL20 rs2981573 G alleleを有する敗血症性ショック患者の28日死亡ハザード比はIL20 rs2981573 A alleleを有する患者に比して有意に高かった(adjusted hazard ratio 1.27; 95% confidence interval 1.10-1.47, P=8.0x10-4).またIL20 rs2981573 G alleleを有する敗血症性ショック患者はA alleleを有する敗血症性ショック患者に比して,より長期間臓器不全を呈していた.そして,インビトロ実験で機能性を検証すると,敗血症を模した刺激を加えたlymphoblastoid cellのIL20の遺伝子発現はIL20 rs2981573 GG genotypeが有意に高かった.またsecondary cohortとして心臓血管外科術後ICU患者(n=981)を対象とした解析では,IL20 rs2981573 GG genotypeを有する患者は有意にICU入室期間が長かった.これらより,IL20 rs2981573 GGは,IL20遺伝子発現,敗血症性ショックや心臓血管外科術後の転帰不良と関連した.
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